ねこぢゃらし

ねこぢゃらし

何を言われたって。
なんと言われたって。
それが自分らしいから。
胸をはって。
空を見上げて。
前に進もう。


とても、とても、昔の夢を見た。
薄暗い、でも優しい土の匂いに満ちた、故郷。

「やぁい、オザックのばぁか!」
「こんなもんも作れないのかよ。お前なんもできないのなー」
「俺の弟だって、これくら持てるぞ。すげぇひ弱!女より弱いじゃん」

はやし立てる子ども達より、ずっと細くて白い手が、ぎゅっ、と握られ。
何か言いたいのに。
こんな時は何も出てこない。
悔しい、悔しい。
足がぶるぶる震えた。
怖いからじゃない。悔しいから。

「こいつ捨て子なんだろ?」
「なまっちろい、耳とんがりの取りかえっ子!草臭いからこっちくんなよな!」

腹が立つ。どろどろと熱いものがあがってくるような。
ああ。
なのに、どうして、自分は何も言えず、そこにたっているんだろう。
そんな。
昔の夢を、見た。


「…寝覚め、悪いのう…」
なんだか、血の味がしたような気がした。


わいわいと廊下で声がする。
早起きな連中はもう、起き出しているのだろう。
中庭に面した窓から外をのぞくと、レッドが剣の素振りをしていた。姿は見えないが、元気に朝の歌が聞こえてくるので、レオも起きているのだろう。
「ふむ…」
…あの、いじめられていた子どもの横にレッドがいたら、どうだったんだろう?

『お前達!ひどいまねはやめろ!俺が承知しないぞ!』

「…問答無用に突撃、じゃな」
当の本人だったとしても…やはり、突撃、なような気がした。

「レオとかパピヨンだと…」

『…ふん』
『けっ』

「一言で終わりそうじゃのう」
思わず、笑みがこぼれる。

「アクリィは…」
影で行われそうな報復の数々を思い浮かべ、思わずマイリー神に印を切る。
「考えるだけで怖い…」

身支度を調えながら、そんなことを考えていく。
仕上げに、と、バイキングキャップをかぶりかけ、手がとまった。

「ワシは…本当はどう、言いたかったんじゃろうなぁ…?」

手入れは行き届いているが、かなりの年月が刻みこまれたバイキングキャップ。
しっかりとした、重み。

「こういうことじゃろ?」

バイキングキャップをしっかりかぶると、鏡に向かって、にい、と笑ってみる。
鏡で笑っている、金髪のハーフエルフ。
「これが、ワシじゃ」

…寡黙なのがドワーフの身上。
言いたいことがあったとしても、多分言わなかっただろうから。
貫き続けた年月の重みが、全てを語るのなら。小さな自分は語る言葉を探すべきでなく。ただ、進むべきだったから。

「みんなと違う?それが何だと?お前が一族の誇りを持って、神の教えの通りに生きているなら、それは恥じるべきではないわ!」
いつも堂々としていた父。

「オザックは私たちの大事な息子だもの。私たちの誇りだよ。大好き」
いつも変わらず優しかった母。

旅立ちの時、別れを惜しんでくれた、友も、いた。

恥じるべきは。
周りと違うと、嘆いて動かない自分。
いつだって、立ちふさがるのは、自分。

「まずは自分との闘いということですね、マイリーよ」
ぺちん。
頬を軽くたたく。
おかしな夢でぼんやりしていた頭がすっきりしていくような。


胸を張って。
今日も元気に歩いていこう。


「さて、今日もうまいカレーを作るぞうっ!」

イエローゾロは今日も元気だ。



オザさん、ちょっとメランコリックになる、の巻。彼の視点から、の子どもゾロ、ですので、多分実際は違うと思います。
パピさんとか小さい頃はいじめられっ子属性なような気がするんで。ドワーフの子どもって「じゃ」って言うイメージがなかったので普通の言葉しゃべってます。




作:天崎李玖


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