猫屋敷+

TRPGサークル グループねこぢゃらしの活動記録

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小話:ある日のこと 【イチゾロ戦隊ゾロッター】 …天崎李玖

 KAMADA屋のたぬきそばを豪快にすすり上げると、パピヨンは情けないため息をついた。

「金がねぇ」

「…貴様、食べ物屋でそれはないだろう」
「いや、そば代くらいはあるんだけどさ。今、じゃぺーん亭が改修工事してるだろ?だから休み。バイト代入んねーんだよ」
「そういえば、そんなこと言ってたな。…てことは私も歌いにいけないと言うことか」
 きつねうどんのあげを飲み込み、ううん、と考え込む。
 カウンターから親父が顔をだした。
「なんでぇ、お前さん達、資金難か。…ちょうどいい」
「「あ?」」
「オザックさんの話じゃ、そこそこ剣も使えるってな話じゃねぇか。引き受けてほしい仕事があるんだが」
「やる」
 二人の声は綺麗にそろった。


 そして。

「山の中でカレーの香草探すのに、剣の腕は必要ねぇだろうになー」
「そうとも言えまい?こんな山だ。グリズリーにでも襲われたら、普通の人ならたまらない」
「グリズリーの話はやめろ」

 笹藪をかき分けるレオとパピヨンだった。

 出で立ちはいつもと変わらないが、背中には大きな革袋を下げている。

「えーっと。後は、ムラサキニオイシメジとブナトカゲ…トカゲ?!」
「干したものを煮込むといいスープがとれるらしいぞ」
「うえ。すでに植物じゃねぇよ。オザックもつれてきた方がやっぱよかったかな」
「…貰い分が減るから二人で行こうと言ったのはどこの誰だったかな?」
「うっ。それを言われると弱いな」
「しかも、オザックも誘って、と言われていたのに」
「お前だって、誘わなかったんだから、同罪だろ」
「まぁ、確かに」

 KAMADA屋の親父の依頼は、『メモに書いてあるカレーの材料を採ってくること』だった。
 自分で採りに行くにも遠出だったので、休みを取らねば、と思っていたところだったという。
 1日でじゃぺーん亭ウェイター4日分。悪くない仕事だ。

「紫っていうんだから、これじゃね?」
「それはムラサキテングダケ。噛みつかれると腫れるぞ」
「噛みつく…って…うわぁぁぁ!」
 紫に黄色い水玉が毒々しいキノコの傘が突然開き。

 きしゃああああああああああっ!!

 鋭い歯をむき出し、威嚇する。
 パピヨンは慌ててそれをたたきつけるが、足元の腐葉土でぴちぴちとキノコがはねている。
 結構グロい光景であった。

「キノコの分際できしゃぁ、とか言うんじゃねぇぇっ!!」
「なんでも触るのは危険だと書いてあるぞ」
 手帳くらいの小さな本をパピヨンの前で振ってみせる友人。
 よく見ると『決定版・グリーンマウンテン生き物ガイド第2版』と書いてある。
「用意がいいな」
「基本だ」
「んで、ムラサキなんだか、はどこにあんだ?」
「シダの中に生えてるらしいが…」
「あの辺、シダじゃね?よし、さっさと集めて、ちゃっちゃとバイト料もらってこうぜ!」

 ざざざざざざ。

 イノシシもかくや、という勢いで笹藪をかきわけていく。
「元気だなぁ」
 レオは腕を組み、思わず苦笑したのだった。



「ブナトカゲが見付からねぇな…」

 木々の隙間から差し込む光を見上げながら、パピヨンがそう言うと。
「結構高価なものらしいからな。簡単に見付かるものではないんだろう」
 本から目を離したレオがうなずいた。

「さっきからブナ林を歩いてるっつーのに…ちょっと休もーぜ」
「そうだな」

 丁度よい休憩場所を探そうと足を踏み出したパピヨンが見つけたのは。
「あれ、小屋じゃねーか?」
 焼き物の石を積み上げた小屋だった。
 入り口も小さく、質素な作りだったが、休憩に使うには十分すぎるくらいだ。
「レオも早くこいよ」
 声をかける間もなく、走り出す。

「全く、そんなに元気があるなら休憩する必要もないだろう」
 苦笑を浮かべたレオが小屋に焦点を合わせた刹那、凍り付いた。
「ちょ…待て…それは…」
「あ?どうした?」
「パピヨン、音を立てず、ゆっくり、戻ってこい」
「だからどうしたんだよ?」

 がさ。

 足元で枯れ葉が音を立てた。

 ごと。

 ブロック状の石がことことと落ちてきて、足元を囲んでいく。

「なんだなんだ?」
「馬鹿もんっ!これは人喰い石のレンガレンガだっっ!!」
「人喰いって…ええええええええええ?!」

 ごとごとごと。
 動くたび、それをふさぐように朱色の石が降ってくる。

「ゾロッター3巻コラムにも載っていただろう!!」
「キャラクターは普通読めねぇんだよっ!!」
「にしても、ちゃんと書いてるだろうっ!ここに!ばっちりとっ!」
 腕を引っ張りながら友人が指をさしたそこには。

『わたしはレンガレンガです』

「普通、山小屋に表札なんてありえねぇよっっ!しかも自己紹介!」
「レンガレンガは集団で建物に擬態するらしい。隣町の名物モンスターくらい覚えておけ」

 煙突状に組みあがった石から頭だけ出している姿はいささか間抜けだったが、隙間にもぎっしりと石が詰まっているため、動くことができない。

「なぁ、レオ。これってやっぱやべぇの?」
「人喰い石っていわれてるくらいだから、人を喰うんだろうな」
「…どうやって?」
「いや…よくは知らんが、ゆっくり溶かして喰うそうだ」
「レオっ、何とかしろっ!」
「…何とかはしようとしている!しかし、びくともせんのだ、仕方あるまいっ!」
「自分の友達が喰われるのを仕方ないですますな!」
「すます気はないんだがな…」
「うわ~、いまぬるっていった!ぬるっていった~~~~~!!!」
「落ち着け、パピヨン!…やっぱり、こういうのが得意な人間は連れてくるべきだったか…」
「ぬるって、ぬるって…くそ~、オザック~、悪かった~どうにかしてくれ~」
「反省するんじゃな?」
「反省する、反省するから!…あ?」

 気まずそうな顔をするレオの肩から顔をのぞかせているのは。

「いつから見てた?」
「ブナ林のあたりから。後から親父さんにきいて、ついてきたんじゃよ」

 そう、オザック本人だった。

「分け前、とかなんとかいうよりも、じゃ」
「な、なにかな、オザック?」

 かっちゃん、かっちゃん。

 みるまにパピヨンの頭上まで積まれていく、レンガ。

「…マリスさんに『お疲れ様、オザックさん』とか『助かったわ、オザックさん』とか言われるチャンスを…」
「わ、わかった!今回のもオザックが行ってきていいから!」
「…オザック、本気で怒ってるわけじゃないんだろう?からかうのはそれくらいにしてやってくれ」
「そうじゃな」

 にこっとさわやかに笑ったあとでつむぎだされたものは。

 おなじみ、バトルソング、だった。



 動かなくなったレンガの山から、パピヨンがはい出てくる。
「っつちゃ~、ひどい目にあったぜ」
「…あ、本当だ。レンガレンガはバトルソングで麻痺を起こすって書いてあるな」
「じゃろう?」
 小冊子を目で追うレオにオザックがうなずいてみせた。
 ぱたぱたとホコリを払うパピヨンを見ながら、オザックがそっとレオに耳打ちをした。
「レオがいつもパピヨンをからかっておもしろがるのがわかったような気がする」

「あん?二人でなに、内緒話してんだよ?」
「いや、パピヨンは人気者だなぁという、話だ」

 ちがうな。
 やけにきっぱりとパピヨンが言った。

「さっきのオザック、レオと同じ顔、してたぜ?」



レンガといえば、レンガレンガ。おざさんのコラムは秀逸だと思います。
オザックもなかなかどうしていじわるさんの才能があるんじゃないか、と思う今日この頃。



作:天崎李玖
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