猫屋敷+

小話:ガラス越しに触れる【イチゾロ戦隊ゾロッター】 …KAZ-屋

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「パピヨーン。3番のテーブルでご指名よーん♪」カウンターから店の裏手に向かって、陽気な声がかかる。ここは表通りからほんの少し路地を入ったところにある小さな酒場。目立たぬよう、それでいて隠れぬよう、微妙な店構えの割りに客の入りも悪くない中の下くらいの店。陽気な喧騒と、たまに訳のわからない乾杯。流れの芸人が歌い、舞う。そんな酒場の楽屋で、パピヨンは身支度を整えていた。「ちょっと待ってよ、姐さん。オレまだ...

小話:風鈴 【職業、仕事人】 …KAZ-屋

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 木を寄せて綾模様を織る。 ふと、手にした道具の鈍い光に、もうひとつの『仕事』を思い出した。 ソレは決まって風のない午後の、うだるような日差しの中。 ソレは狙い済ましたかのように、家人の出払った静寂の中。 今ここに居るのは「寄木細工職人の太一郎」でなくてはならないのに、その刃の白さを目の当たりにした途端、「暗殺者」としての自分と、その所業を思い出してしまう。――考えてみりゃ、昼も夜もノミ振ってんだな...

小話:雨 【職業、仕事人】 …天崎李玖

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 灰をといたような空色と。 抑揚もなく振り続き雨は。 情けなしと恨み言を涙まじりに言う、女のようだと。 錦糸を手繰る手を止めた男は、外をみやると、そんなことを思った。 ふいに。 重たい雨音に、軽やかな足音が混ざるのに気づき、織上は引き戸に手をかけた。 立て付けの悪いそれが、出し抜けに開き。 訪問者はぽかんと口を開け、総髪の浪人を見上げる。「わ。鞠のお師匠様…どうして鈴がくるの、わかったの?」「お鈴...

小話:香 【職業、仕事人】 …天崎李玖

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「おや、もう帰るのかい?」気怠い仕草で女がその身を起こす。「そろそろ戻らないと木戸が閉まってしまいますから」泊まっていけばいいのに、と寄り掛かる手をやんわりとほどく。「冷たいこと。いい人の所へお帰り?」いい人がいたらここにいないでしょう?ゆったりと笑い、枕元に置いてあった刀をきり、と帯に差す。女は男が武士であった事を今更ながらに意識した。もっとも、男の持つ、どこか崩れたような華やかさは、武士を演じ...