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生命の果実【クトゥルフ神話TRPGリプレイ】

コミックマーケット86にて頒布したコピー本より。

ラプラスの螺子』のPC達が『クトゥルフの呼び声』を遊ぶよ!
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【混沌の血脈】第1話「輝ける暗黒の書」5

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Ep.5 日常は緩やかに侵食される

KP 「 うーん、心理学」
椎名 「35…、愛、愛だ…っ。とうっ」



楠見 「愛はなかったようだ。そうそう、触っただけで感電死ってことは、あの電流は死に至らせるほどのものだったということかな」
KP 「うん」
楠見 「つまり仕掛けた相手は教授を殺す気だったと」
椎名 「でもなんで教授は電球を触ったんだろうね」
楠見 「つかないな、おかしいな、ビリビリってところじゃないかな」
楓  「電気つかないようにしておくのは簡単だしね」
楠見 「て、ことなんだろうけど」
楓  「それだけの電流をどうやって流したんだろう」
柊  「----そういう物騒な話をしているんだね」
KP 「それは家庭電流で十分」
柊  「なんか今朝新聞で読んだことのような気が」
楠見 「ちゃんと口に出さなきゃ」
柊  「物騒すぎて口に出しちゃうんだろうね。『あの…、清四朗さん?』」
椎名 「は、は、は、はい。何でしょうか」
柊  「その、何か、有原さんとお知り合いなんですか」
椎名 「あ、あのですね、僕の知り合いの知り合いで、こー出会って知り合いになったんですよ」
楠見 「話が長いよ、清四朗君」
柊  「今朝新聞で拝見したんですけど」
椎名 「いや、その、第一発見者が実は僕でして」
柊  「まあ、それで娘さんはどうなったんでしょう」
椎名 「横浜の親戚の家に一泊したらしいですよ」
柊  「じゃあ、失踪したというのは違うんですか?」
椎名 「あ、彼女のデマです」
楓  「デマだなんて。昨夜の時点ではそうだったでしょ」
楠見 「むきむき、むにゅー、ぺりぺり、ぱく」
KP 「行動が前作を引きずっているような」
楠見 「え、普通白い皮も取るじゃない」
椎名 「で、電気に細工がしてあったようなんですよ」
柊  「まあ、おそろしい話ですね」
三吉 「----よく考えたら、俺なんも聞いてない」
椎名 「多分さくやさんに話しているのを聞いているんじゃないかな。『で僕も感電して指を…』」
三吉 「ああ、それでか。そういえば理由聞いてなかったな」
楠見 「----心臓が止まったんですよね。最初は死ぬかと思いましたよ」
柊  「大丈夫ですか、本当に」
椎名 「とりあえず足はありますよ」
KP 「とりあえず情報は伝わったわけだね」
柊  「恐ろしい話だと思った」

楠見 「もう昼休みも終わったかな。もう待ってる?」
楓  「もうすでに長蛇の列?」
KP 「おお、楠見先生じゃよ。いつ見ても良い男じゃの」
楠見 「駄目ですよ、梅さん。おじいちゃんがいるでしょう」
KP 「やだよ。あんなしわしわより、若いぴちぴちした兄ちゃんの方がいいに決まってるだろう」
楠見 「----ぴちぴち…」

椎名 「で、しんたが行ったら、仕事しようかって言う」
三吉 「あ、そうだ、どこまで進んだ?…『いい天気----』『日向ぼっこ----』これが前ので…。なんだこれ」
椎名 「いや…、いろいろあってね」
柊  「そこを飛ばすと、つながってるんだよ」
三吉 「----今日の分はないな」
椎名 「…いや。何とか上げるよ」

楠見 「あれ、梅さん。ちゃんと薬飲んでますか」
KP 「良くなったら、先生に会えなくなるじゃないかい」
楠見 「だからって、四日後に会ったらおばあちゃん死んでた。なんていうのは厭ですよ。僕は」
KP 「大丈夫だよ。百年たったって生きてるよ」
楠見 「…ここは人間専門ですから、妖怪はお断りですよ。あ、そこの君、それもってきて」
楓  「あ、これですか」
楠見 「やっとわかってきたねえ」
楓  「…」

三吉 「じゃあ、夕方また来るよ」
椎名 「あ、あの----三吉さん。ここにいてくれないかなあ」
三吉 「仕事道具も、なにもないよ。俺」
椎名 「下書きだけでも出来るだろ。駄目かい」
三吉 「いいけど。(診療所を見て)あんな風には手伝わないよ」
楠見 「あんなところに立っているのが原因なんですよ」
椎名 「で、ちょびっとづつ書いて、出来たら三吉さんへ渡す」
柊  「もくもくとやって、時間は過ぎてゆく」

椎名 「駐在さんから連絡とかないの」
KP 「お昼過ぎて二時頃。とんとんと表をたたく音がする」
楠見 「ああ、裏に回ってね」
駐在 「本官もか」
楠見 「あ、駐在さん。この間はどうも。どうなさいました」
駐在 「あの後の結果について。二人とも気になっていたようだからな」
楠見 「それは、わざわざどうも」
駐在 「結果から先に言ってしまうと、あの電気には手を加えられた跡がある。何者かの手によって、電源から直接電流が電気の方に流れるように細工されていた」
楠見 「それでは殺人として扱うことになったのですか」
駐在 「そうとしか考えられんからな。あ、このことは内密に頼むよ」
楠見 「はい、僕は内密にしますよ」
椎名 「駐在さん、楓ちゃんに気づかなかったの?」
KP 「駐在さん目星30となっております」
楓  「私は助手です」
駐在 「は?」
楓  「たけしくん泣かないでね。飴あげようか」
楠見 「その子虫歯なんです」
駐在 「君は新聞記者じゃなかったかな」
楓  「何のことでしょう。私は助手です」
楠見 「うちに助手なんていたかなあ」
楓  「鬼のような使いかたしたくせに」
駐在 「君は東亜新聞だったね。君のところだけだよ、ああゆう記事だしたのは。どこから情報をえたのかな」
楠見 「僕たちじゃありませんよ」
駐在 「まだ未発表なんだ。あるとすれば君達だろう」
楓  「彼らじゃありませんわ」
駐在 「ではどこからだ」
楓  「情報源は記者の命。言う訳にはいきません」
楠見 「ままあ、直接被害があったわけではないし、大目に見てやってください」
駐在 「先程のことはくれぐれも内密に頼むよ」
楠見 「そう言えば娘さん帰って来たでしょう」
駐在 「うむ、昨晩の7事頃にきて死体の確認をした」

椎名 「耳ダンボ」
KP 「聞き耳」
椎名 「こんなに近いのに。38成功」

楠見 「で、娘さんはどこへ行っていたと」
駐在 「横浜の父方の実家に行っていた。という話だ」
楠見 「くい違ってないね。電気のことは聞きましたか」
駐在 「一応聞いたが女だしな。機械に関してはさっぱりだ」
楠見 「甘いなあ。ま、出来ることがあれば協力しますから」
駐在 「うむ、民間人の協力は必要だからな。頼むぞ」
柊  「去っていったか」
椎名 「一抹の不安…」

KP 「ばんごはーん」
椎名 「とりあえずさくやさん送ってく」
柊  「そして電車の中も同じかな。あ、でも本の事なら少しすらすらと話す」
椎名 「僕はねって、少し滑らかになる」
楠見 「飯を作っている」
楓  「勝手に台所荒らしている『ろくな物ないですね』」
楠見 「…あなたたちが食べたんでしょう」
椎名 「多分、飯時が終わってから帰ってくる」
楠見 「おかえり」
椎名 「いっぱい話してしまった…」
楠見 「よかったじゃないか。好きなんだろう、彼女のこと」
椎名 「なにぃーっ。なんでわかるんだぁ」
楓  「みえみえです」
楠見 「…君のご飯そっちだよ。あ、君の分の魚ね、彼女が食べちゃったからね」
椎名 「楓ちゃん。僕の取材料は?」
楓  「新聞差し上げますわ」
楠見 「…こんなきわもの新聞もういらないよ。あ、言ってなかったね電気のこと。やはり細工されてたって」
椎名 「横浜の方に行っているのは確かだったの」
楠見 「ウラはとれてないけどね」
椎名 「このあたりは作家の想像力。もしかして親戚一同が教授の遺産を狙って…」
楠見 「…狙う程の遺産があったのかい」
椎名 「かずこさんて、どういう人なの」
KP 「奥ゆかしい日本女性という感じ、この人も読書家でよく部屋にこもっている。あとよく出掛けている」
楠見 「内気そうだったが、そんなに交遊関係は広いのかな」
KP 「いるときは閉じこもっている。いないときはいない」
楠見 「くらいなあ」
椎名 「そんな人には、見えなかったけど。は、もしかして」
楠見 「清四朗君、あまり無茶な想像はやめたまえ。と言いながら、一度後を尾行けたいなどど思っている」
椎名 「崎坂さんに聞いてみようかな」
楠見 「崎坂さんて?」
椎名 「僕の知り合い。彼の紹介で教授と知り合ったんだ。彼に聞けば何かわかるかもしれないな」
楠見 「じゃあ、明日は外出を許可しよう。っていつも許可してる気もするが、あしたは正式だ」

KP 「あしたは土曜日です」
楠見 「じゃあ半ドンかな」
楓  「会社から出張費もらってこよう」
楠見 「明日は今日の2倍の勢いで働かなくては」
楓  「う…。明日は会社で記事書いてようかな」
楠見 「…いつ駐在さんが来るかわからないな」
楓  「明日もお手伝いに来ていいですか。先生」
楠見 「君がそこまで言うのなら、いつでもおいで」
楓  「ありがとうございます」
椎名 「とりあえず、三吉さん見送って」
三吉 「明日は朝からか。仕事場移さんとな」
楠見 「…みんな食費ぐらいは入れて欲しいものだ」」
全員 「----…」


KP 「朝です」
楓  「そしてまた東亜新聞は発行される。『謎の失そう』には訂正記事が。あと昨日聞いたことと」
柊  「まあ、おそろしいこと」
楠見 「清四朗君、この新聞とるのやめようか」

楓  「おはようござします」
椎名 「楓ちゃん。またここウソだよって、赤線をひく」
楓  「こことここが椎名さんのいったところで、私はここにちょっと飾りと語尾を変えただけです」
椎名 「----新聞て、飾っていいのかな…」
柊  「そしてまた朝も早よからやって来て」
椎名 「さくやさん、おはようございます」
柊  「今度はおかずをもって来てる」
楠見 「おお」
椎名 「泣きながら、じーん」
楓  「泣いてるうちにくっちゃう。おいしそうですね」
椎名 「それ食べたら仕事だな。今日は午後から用事がありまして、午前中だけなんですが、どうもすみません」
柊  「いいえ、よろしいんですよ」
椎名 「勿論おうちまでお送りします」
三吉 「朝から行くよ荷物持って」
椎名 「午前中仕事して、お昼になったら『ちょっと彼女送って行きます。帰ってきたら2時頃になってるんじゃないかな」
楠見 「2倍の忙しさにくたくた」
楓  「よれよれ」

椎名 「電車で行くの、歩いて行くの?」
KP 「太東区。距離あるよ」
楓  「電車か、まあいいか、出張費もらってきたし」
楠見 「貰ってきたんだ」
椎名 「多分ポケットがさがさ、…」
楓  「----あとでかえしてくださいね」
楠見 「ポケット裏返して…」
楓  「絶対返してくださいねっっ」
椎名&楠見 「ありがとう楓ちゃん、恩に着るよ」
楠見 「面白いこと見付けたらまっさきに教えるよ。現代の最新医療でね…」
楓  「私は生活欄です」

椎名 「三吉さんもついてくるんだっけ」
三吉 「どうしようかな、行こうかな」
椎名 「道は迷わないよね。崎坂さんてどういう人物?」
KP 「代議士、崎坂っていう字を見た途端はっと気付く」
椎名 「自分は貧乏なのに、何故知り合いは金持ちばかり…」
楠見 「この大ボケがうけるんじゃないかい」
KP 「あわれをさそうとか」
柊  「で、ご飯を食べにいらっしゃい。と」
楠見 「清四朗君、こんな有名な人と知り合いだったのかい」
椎名 「彼の娘さんが僕の童話を気にいってくれてね」
楓  「実はすごい人だったんですね。意外です」
椎名 「でも僕は…ポケットびらびら」
楠見 「…」

椎名 「じゃあ、ドアをがんがん」
KP 「はいどちらさまでしょうか」
椎名 「椎名ですけど、こんにちわ」
KP 「まあ椎名さん。丁度よいところに。今日は旦那様もいらっしゃいます。奥へどうぞ」
椎名 「あの、友人達がいるんですけど、いいですか」
KP 「まあ、楽しそうな方々。どうぞ。旦那様、椎名さんがおいでになりました」
椎名 「おじゃまします」



…この続きは本編にて…


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【混沌の血脈】第1話「輝ける暗黒の書」4

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Ep.4 診療所は戦場のごとく

楠見 「気になるんで、逐一見てます」
椎名 「僕は話す」



KP 「 そしたらね椎名さんが情況を説明してくと、手紙が来たってところでは、うんうんとうなずいている。死体を発見したというところで、眉を一瞬上げて、でうつむいて目で先をうながす。あと椎名さんが電気を触っちゃったってところで、ふっと目を大きく見開いたね」
楠見 「 それは驚き?」
KP 「 驚きだね。心理学振って出たら、もう少し詳しく…。驚きだね」
楠見 「 お、驚いている。そりゃそうだよな。ははは」
KP 「 驚いた後で手に目をやって『そんなことがあったんですか』」
楠見 「 妙に落ち着いてますね。てっきり泣き崩れるかと」
椎名 「 かずこさんは気丈だから」
かずこ 「肉親の死というものは、なかなかすぐに把握できるものではありませんもの」
椎名 「実際に見てないしね」
かずこ 「私か出るときはあんなに元気そうだったのに」
椎名 「 何日位旅行に行ってたんですか」
かずこ 「昨日の朝発ちまして、向こうで一泊して、つい先程帰ってきました」
楠見 「 ふうん」
椎名 「楽しかったですか」
楠見 「こんなときにっっ」
かずこ 「用事があると言って残った父を、無理にでも引っ張っていくべきでしたわ」
椎名 「 そう言えば、最近教授が急いでやってることなんてありました?」
かずこ 「…先日行った中東での調査の資料などを、整理しているようでしたけど」
椎名 「 なんか言いたいことでもあったのかな」
楠見 「 そうだねえ、なにか清四朗君を呼ぶようなことがあったのかな」
椎名 「 うん、結構字が急いでたんだよね。でも急ぐものを手紙で出すかな」

(楓  「歩いてみかん持っていく娘に、行かせりゃいいのに」)

椎名 「その資料の中で変わったものでも見付けて、僕に見せようとしたのかな」
かずこ 「さあ」
椎名 「手紙っていうことは、その場を離れられないほどに凄いものだったのかな。教授はなにか言ってませんでしたか?」
かずこ 「椎名さんをお呼びするようなものはなにも」

楠見 「 うーん、なぞだあ。しかし何故こんなにおちついてるんだ、この女。と、内心おもっている」
椎名 「 そりゃ思うんだろうね」
楠見 「 医者だから、身内が死ぬ場面て結構見てるじゃない。それらのパターンに当てはまらないから、ふに落ちないものはある」

かずこ 「一通り伺ったようなので、警察の方に行こうと思うのですが」
楠見 「 はあ。引き留めてしまってすみませんでした」
かずこ 「いいえ。こちらの方こそ引き留めてしまって申し訳ありませんでした」
楠見 「 では、お気を強く持って」
かずこ 「有り難うございました」
椎名 「 気をしっかり持ってくださいね。じゃあ」


楠見 「 …いやあ、清四朗君。どうも落ち着いてると思わないか」
椎名 「 うん、落ち着きすぎとは思ったけど」
楠見 「 いろいろ気になることはあったねえ」
椎名 「 とりあえず、気になる、だけで帰るんだろうな」
楠見 「 あ、君一応安静なんだから早く帰りましょう」
椎名 「 じゃあ、走って帰りましょうか」
楠見 「 そんなに死に急ぎたいですか」
椎名 「 ……」
楠見 「 寄り道しないという意味であって、走れと言うことじゃありませんからね。僕が言いたいのは」
椎名 「 すまん」
楠見 「 三吉さん帰っちゃったねえ。夕げのごちそうしようと思っていたのに」
椎名 「 三吉さんにも悪いことしたな。あした謝っておこう」
楠見 「 なかなかいい人だね」
椎名 「 うん、僕の友達だからね。とりあえず安静って言うからには今晩はもう寝るよ。」
   


KP 「 で、翌日の朝なんだけど」
楠見 「 たんたんたんたん」
楓  「 新聞にはミステリータッチの記事が載っている」
KP 「 …東亜新聞とってる?」
楠見 「 うん」

楓  『 ----大学教授謎の怪死。密室の中で彼は何故…』

楠見 「なんか色物くさい記事ですね」
椎名 「あいつなんかウソ書いてないかなぁ」
柊  「家でその記事を読みながら『まあ椎名さんの家の近くですわね。世田谷っていったら』なんて言ってる」

楓  『----一人娘はいったい何処に消えたのか』

楠見 「……。清四朗君、卵焼きは残さないでくださいね。死因なんかは言及してあるの?」
KP 「 うん」
楠見 「どこまで話したのかな」
椎名 「 聞かれたことは…、でも詳しくは話してないはずなんだけどな」

楓  『 ----確かなスジからの情報によると、感電による心臓マヒが直接の死因らしいが…』

椎名 「 ----……」
楠見 「 ----確かなスジって何だろうね。これってさ、『新聞』じゃないよ」
椎名 「 週間誌じゃないの、これ」
楓  「 本当は書かれているんだけど、ウソくさいと」
椎名 「 駐在さんにお怒られなきゃいいけどナ」
楠見 「 怒られるのは僕たちじゃないかな」
椎名 「 僕詳しくしゃべってないよ」
楠見 「 話したのは清四朗君だよ」
椎名 「 駐在さんも詳しくじゃなかったらいいって言ったよ。第一楓ちゃんもしゃべってないよ」
楠見 「 はははは」

楓  「 あ、この時点では娘さんが帰ってきたこと知らないから、謎の失そうになっている」
椎名 「 かずこさんが読んだらどう思うんだろう」
楠見 「 これ凄く彼女に迷惑がかかるんじゃないかな」
椎名 「 ちょっといなくてさあ、くらいしか言ってないよ」
楠見 「 ----あやしい新聞だなあ」
椎名 「 あ、9時くらいに、さくやさんが来るんだろうなあ」
   


柊  「 8時くらいかも。知らない人の家に行くものだから、びくびくしている。『いつまでもこのままじゃいけないわ。早くこの対人恐怖症を治すなきゃ』」
椎名 「 でもなるべく下を見ながら歩いてるんでしょ」
柊  「 そうそう」
楠見 「 ここは朝8時ごろから診療開始かな」
柊  「 その頃には戸口に立っているんだろうな。とんとん『あのぅ』」
楠見 「 聞こえてないよ、多分。うわぁっ、おじーちゃん。どーしてこんなことしたんですかっっ」
KP 「 じゃあ、清四朗君、目星」
椎名 「 僕?…頼む、気付いてくれっっ」
楠見 「 僕もふろう。----」
椎名 「 ふ…、愛が勝った。ちなみにひなたぼっこも振っていい?45、成功」
三吉 「 ひなたぼっこ成功って何だよそれ」
椎名 「 だから、心地よくひなたぼっこをしてるんだよ」
KP 「 そうすると、正面の方から『すみませーん』て声が聞こえてくる」
椎名 「 はっ。だだだだだだだっっ」
柊  「 多分戸口で困ったような顔をして立っている」
椎名 「 裏から正面玄関へ。『さ、さ、さ、さくやさんっ、こ、こちらですっ」
柊  「 はい、おじゃまします」
椎名 「 いそいそと茶を入れる。けど舞い上がってるから」
 
----想像はつくけどね。
     
柊  「 あ、お構いなく」
KP 「 …構ってほしくないかも」
楠見 「 その間もこっちは戦場。うわぁっ、おじーちゃんっ」
柊  「 あのぅ、忙しそうですね」
椎名 「 ピシャッ」
楠見 「 ひ…ひどい」
椎名 「 か…彼は、その、しょ、しょうがなくて、あの、あああ僕はいったい何を言っているんだあっ」
柊  「 多分それが彼の仕事だって言いたいんだろうと思っておく」
椎名 「 でもって、そのまましーん」
KP 「 三吉さんは、いつごろ来ますか」
三吉 「 んー、俺は昼過ぎかな」
柊  「 あの…お仕事のほうは…」
椎名 「 はいっ」
楠見 「 何かするんだったら奥の部屋使ってくださいね」
   


楓  「 わざわざ正面玄関から『今日は新聞読みました?」
楠見 「 あ、裏から入ってね」
楓  「 いやだわ先生、そんなに邪険になさっては。新聞読みました?」
楠見 「 これちょっと持っててくれるかな」
楓  「 は、はいっ」
楠見 「 ちょっとその子抱いててね」
楓  「 大丈夫だよー、いたくないからね」
楠見 「 以下省略」
KP 「 そして昨日の戦いが、また繰り返される」
椎名 「 ぎこちない動作で、これ、原稿用紙。これ、鉛筆です。これ、消しゴムです」
柊  「 はい」
椎名 「 ----あ…、そう言えば、この前のところの原稿、渡しちゃったんだ。…前半部分を考える」
楠見 「 左手で書いたのを清書してもらった方が、早かったのでは」
椎名 「 …いい天気ですねえ」
柊  「 はい、『いい天気ですね。』」
椎名 「 いやあ、ひ、ひなたぼっこ日和ですね」
柊  「 『日なたぼっこびよりですね』…かぎかっこかなぁ」

----結局三吉さんが来るまで、この状態のまま。まったく…。

椎名 「 なんか一気にボッていきそう。頭から煙り出てるの」
柊  「 なんでこの人気がつかないんだろう。心理学85持ってるのに」
KP 「 自分のことがわからないっていうのが、残りの15なんだよ」
柊  「 なるほど。人のことだけか」

----…君、前作引きずってるだろ

三吉 「 昼過ぎたら行くよ」
楠見 「 昼になったら『あ、いらしてたんですか。来たんだったら言ってくれればいいのに、みずくさいな』」
楓  「 しっかり玄関からごあいさつしました」
楠見 「 ああ、裏から入ってこないと駄目ですよ。まあよかったらご飯食べてゆくかい?」
楓  「 もちろんです」
楠見 「 …遠慮のない人だなあ。こっちだよ」
楓  「 あら、椎名さん新しい仕事ですか?ぴらり、『いい天気ですね』『日なたぼっこびよりですね』…これが出だしですか」
楠見 「 作風、変わったんじゃないかい。清四朗君」
   

「じゃ、行きます。ウラから」
楠見 「ああいらっしゃい。あなたも一緒に食べますか」
三吉 「ああ、メシまだだったんですよ」
椎名 「さ、さくやさんも、どうぞ」
楠見 「たいした物はないんですけどね。男の一人暮らしは」
柊  「強張ったほほえみを浮かべて『はい…』」
三吉 「あ、これさし入れね、それと原稿」
椎名 「----相変わらずすごいな、おまえの絵はさ」
三吉 「うーん、でも金ないんだよな」
楠見 「…こっちも、何故か入ってこないんですよね」
椎名 「ひぃーって目をそらすんだろうね」
柊  「そういえばお見舞い持ってきたんですけど」
椎名 「えっ、いーんですか?そんなに気を使わなくても、たいした怪我じゃないのに」
楠見 「たいしたことなのいなら、書けばいいのに…。あ、デザートはあのみかんでもいただきましょうか」
椎名 「ど、どうぞ」
柊  「あ、ありがとうございます」
楠見 「そういえば、有原教授の件はどうなったのかな、新聞社の方には何かありましたか?」
楓  「これといって。あ、娘さん帰ってきているそうです」
楠見 「『謎のしっそー』か」
椎名 「楓ちゃん、僕あんなこと言ってないよ」
楠見 「僕も言ってない」
楓  「でも昨日からいないって…」
楠見 「それは『しっそう』ではなくて『留守』」
楓  「言葉のあやですわ」
楠見 「…僕は今まで、記者の仕事を誤解していたような気がするよ」
楓  「記者----それはとても高尚な仕事ですわ」
椎名 「…とりあえず、駐在さんから電気の事聞くのが一番じゃないかな」
楠見 「そうだね僕は専門じゃないからね」
柊  「一人だけ話がみえない」
椎名 「そのことに気付くかな」
KP 「うーん、心理学」
椎名 「35…、愛、愛だ…っ。とうっ」


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>>目次

【混沌の血脈】第1話「輝ける暗黒の書」3

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Ep.3 たとえ心臓が止まっても、恋はハートでするものさ

椎名 「やややややややああ、さ…さくやさん」
KP 「・・・・・」



柊 「どうなすったんですか、(三吉を見て)…こちらのかたは?」
三吉 「私は椎名の友人で、童話の挿絵を書いてます、坂本 三吉といいます」
柊 「『柊さくやと申します。はじめまして』 でもまだ顔が こわばってる」
三吉 「実はですね、椎名がちょいと右手を怪我しましてね」
柊 「まあ、それは大変ですわね。お仕事は大丈夫ですの」
椎名 「だだだだぢじょうーぶ、ですよ、はははは」
三吉 「これが大丈夫じゃないんですよ」
柊 「はあ」
三吉 「つまりですね、彼の代わりに童話を書いて欲しいの ですよ」
柊 「え、私がですか」
三吉 「ああ、ちょっと言い方が変でしたね。つまり、彼が 話す、貴方が書くということです」
柊 「代筆ということですわね」
椎名 「思いっきり首を振る」
柊 「…はい、わかりました。私でよろしければ」
椎名 「多分その後にへらーって笑うと思う」
柊 「では、どちらのほうで」
椎名 「病院で書くだろうから、自分の住所と、診療所の住所と、楠見さんの名前を書いて、三吉さんに渡す。 『これ、おれんち、こっち、あいつんち』」
楠見 「あんたは蛮族か」
三吉 「はい。これが連絡先」
柊 「これはいつから始めたらよいのでしょう」
椎名 「あ、あしたからお願いしますっ。声が裏返ってる」
柊 「わかりました。にっこり」
椎名 「じゃあ、その診療所の所にいると思いますからー。 またあしたっ。って言って走り去る」
柊 「去っていったので、呆然とするかも」
三吉 「…それじゃあ、お願いしますね」
柊 「はい」

楠見 「はあ、人がすいた。清四朗君ほっといてごめんね。そろそろ…あれ、清四朗君どこいったんだい」
楓 「さっき出掛けましたけど?」
楠見 「もっと早く言ってよ。彼はあれでも重病人なだよ。心臓が停まったんだからね、さっきは」
楓 「まあ、そんな事とはつゆしらず」
椎名 「しばらくしたら帰ってくる」
KP 「椎名さん、家から原稿とか取ってきたりしないの」
楠見 「三吉さんに取ってきてもらえば」
三吉 「とりあえず、診療所に戻る」
楠見 「いやあ、なにやってたんですか、清四朗君」
椎名 「いやあ、ちょっと」
楠見 「やけどは早いうち治療しないと治りが遅いよ。全治一週間になっても知らないからね」
椎名 「全治一週間…。そしたら一週間彼女に会えるんだ」
楠見 「とりあえず今日一日は、安静にしていること。まあ、ご飯は何とかしよう」
椎名 「僕…白いご飯が食べたいな。ここ一週間まともな物食べてない」
楠見 「今月の給料、半分まわしてくれるなら構わないよ」
椎名 「半分はちょっときついんだよな」
楠見 「…君は何年ためてるんだい。ツケ。そろそろ僕にも我慢の限界ってものがあるよ」
椎名 「それは…細々とした生活費から一生懸命」
楠見 「出してもらってないんだよう」
椎名 「本人出しているつもり」
柊 「そして毒メシに格下げか」
楠見 「まあ、いいよ今日は。ぷんぷん」
椎名 「ううっ、すまないな、しんた。」
楠見 「にしても、今日は随分早く仕事が終わったな。人を使ったということに気付いていない」
楓 「ひどい」
楠見 「じゃ、そろそろご飯にしようか」
楓 「あの…、お話は」
椎名 「なんだっけ」
楠見 「君ぃー、死にかけたこと忘れちゃ駄目だよ。心臓が停まったんだよ」
椎名 「うん、彼岸は見えなかったよ」
楠見 「そ、そうか」
楓 「じゃあ、あの時の奇妙なうめき声は貴方でしたか」
椎名 「ちょっと感電しちゃってね。なんかこうビリッとしたと思ったら、目の前真っ暗になってね。気がついたら、焦ってるしんたと検死官がいたんだよ」
楠見 「さすがに心臓が停まったときは僕もびっくりした」
楓 「聞いたらなんでも話してくれるんだろうか」
楠見 「もちろん。タブーがないから。でも新聞記事として発表できるような内容じゃないと思いますよ」
楓 「まあ、そこらへんは多少手を…。はっ」
楠見 「まあ、僕はいいけど。お巡りさんに止められてからじゃ遅いからさ」
椎名 「だけど、しゃべるんだろうね。朝教授に呼ばれて…べらべら」
楓 「教授は普段どんな人だったんでしょうか」
椎名 「明るくて、人望もあって、いい人だったよ」
KP 「うん。学会でも認められてて、ついこの間も中東の方に、キリスト教についての調査に行ってきたよ」
椎名 「多分、出会ったときのことまで、しゃべっている」
楓 「全部メモしてんだろうね」
楠見 「二人とも頭悪そう」
楓 「ははは、はっ、夕刊に間に合わない。どうしてこんな時間に」
楠見 「そう言えば何故ここにいらっしゃるんです?」
楓 「この話をうかがうためですっ」
椎名 「そう言えば楓ちゃん使われてたよね」
楠見 「誰に」
椎名 「しんた。すごいこき使ってたじゃん。シロウトを」
楠見 「おぼえてないよ、そんなこと」
椎名 「んー、タダ働きだったよ、楓ちゃん」
楠見 「どうりで今日は能率が良かったわけだ」
楓 「…記事の為なら、命も賭けましょう。でもひくひく」
楠見 「ごめんね覚えてないんだよ。ははは」
椎名 「まあ、楓ちゃんこれで話もいっぱい書けるだろ」
楓 「ええ、ありがとうございます。明日の朝刊を見てくださいね」
椎名 「タダでちょうだい」
楓 「買ってください」
椎名 「取材料としてさ」
楓 「取材料は今日の手伝いでチャラということで」
椎名 「え、それは彼の…。僕のは」
楓  「あなたは、教授の家から送ってあげました。それでは今夜はごきげんよう」
KP 「ははは、去っていってしまった」

楠見 「いい友人を持って幸せですね清四朗君」
椎名 「あーゆートコがなけりゃ、いい奴なんだけどね」
楠見 「なかなか働き者でいい娘だと思うよ」
椎名 「楓ちゃんも、しんたぐらい心が広ければなあ」
楠見 「医は仁術って言いますからね。このくらい心が広くないとやっていけないんだよ」
KP 「…。」

椎名 「三吉さんは送って帰っちゃったの?」
三吉 「あ、椎名の家に寄って荷物取ってくる」
KP 「三吉さんが椎名さんの家に行くと、戸口のところに知らない若い女の人が立っている」
三吉 「どんな人?」
KP 「割合奇麗な人ですね。APPは大体13ぐらい」
三吉 「えーと、椎名にご用ですか」
KP 「はい、そうですけど。あなたさまは」
三吉 「椎名の友人です」
KP 「『まあ、そうですか。私父の実家の方に行っておりまして、これを差し上げようと思って持ってきたのですけど』風呂敷に包まれているのは、何やらごろごろした物ですね」
三吉 「ああ、それはどうも。なんですかそれは」
KP 「みかんです」
三吉 「あ、本人は今ここにはいないので、渡しておきます」
KP 「ご旅行にでも行っていらしゃるんですか」
三吉 「ちょっと…、怪我をして入院しているんです」
KP 「まあ、この間お会いしたときは元気そうでしたのに」
三吉 「うん、まあ、突然するのが怪我だよね」
KP 「…それもそうですわね。それでは有原が、こちらのみかんお届けしたとお伝えください」
三吉 「有原、ですね。はい、わかりました」
楠見 「聞いてないから、何の疑問も持たないよね」
KP 「それでは、よろしくお願いします」
三吉 「わざわざどうも」
KP 「三吉さん、目星振ってください」
三吉 「22、OK」
KP 「どこかから帰ってきた、という感じですね。大きな荷物を抱えているといった。去って行った先は…、世田谷です」
楠見 「…伏線だな」

この後鍵の掛かっていない清四朗君の部屋から、荷物を取り出す三吉さん。そして楠見診療所では…

椎名「涙流しながらご飯食べてる。いやあ、こんな立派な食事久し振りだ」楠見「一応塩魚もあるからね」椎名「こんな大きいの食べていいのか」
楠見「…ちゃんと噛んで食べるように」
椎名 「あ、三吉さん、持ってきてくれたのかい」
三吉 「うん、こっちが道具と着替え。こっちがみかん」
椎名 「?。君の差し入れかい」
三吉 「俺な訳ないだろ。そんな金ないよ」
椎名 「じゃ、誰から」
三吉 「おまえの家に行ったら、家の前に女の人が立っていて、おまえに渡してくれって」
椎名 「なにかな」
三吉 「有原って言ってたな」
楠見 「ぴきーん」
椎名 「有原---?もしかして、かずこさんかな」
三吉 「若い女の人だったぞ」
椎名 「うちに来る有原っていったら、かずこさんしかいないけどさ。彼女どこかに行ってたのかな」
三吉 「旅行の帰りみたいだったけどな」
楠見 「それなら家にいなかくても、しょうがありませんね」
椎名 「あ、このまま家に帰っちゃったら…」
楠見 「それはまずいですね。しょうがない、有原さんの家に向かいましょうか」
椎名 「うん、ってこの体で行こうとする」
楠見 「安静にしてて欲しいんだけどな。自分がどういう状態か分かっています?」
椎名 「だってしんたが、突然行ったって怪しくないか」
楠見 「僕はそんなに怪しいかい」
椎名 「いきなり来た知らない人が、僕は怪我をしていて、お父さんは死にましたって言うのかい」
楠見 「それは、そうだね。しょうがないから行こうか」
椎名 「じゃ、頼むよって、自転車の後ろに乗ってる。あ、三吉さんはどうするんだい」
三吉 「仕事があるから帰るわ」
椎名 「じゃあとりあえず、出来た分だけ渡しておくヨ」
三吉 「あぁ、すまんな。あとな、鍵はかけておいたほうがいいぞ」
椎名 「ははは、鍵どこいったかわかんないんだよな」
三吉 「それじゃまた明日来るから」

楠見 「清四朗君、この自転車は、君を乗せて耐えられるほど、強くないよ」
椎名 「じゃあ、どうやって行くんだい」
楠見 「君にも僕にも、二本の足があるからね。さあ行くよ」

KP 「有原宅につきました」
椎名 「明かりはついてるかな」
KP 「うん。ついてる」
椎名 「がんがんがん」
KP 「はい、どちら様ですか」
椎名 「あ、椎名です」
かずこ 「まあ椎名さん。みかん受け取っていただけました」
椎名 「あ、どうもごちそうさまでした。いったい何処へ行ってたんですか?みかんと言うからには和歌山ですか」
楠見 「愛媛というものありますよ」
かずこ 「横浜の方なら汽車も出ていますから、あちらの方まで行ってきたんですよ」
椎名 「え、横浜ってみかん採れるんですか」
かずこ 「あまり有名ではありませんけど。あちらの方に父の実家がありましたものですから」
楠見 「言わなくていいのか、という顔でそっちを見ている」
椎名 「多分、どうしようって顔で見てると思う」
楠見 「僕に聞かないでください、って目で見返す」
かずこ「それより上がっていらっしゃいませんか。父はまだ帰ってきていないようですけど」
椎名 「あの、ちょっと事情がありまして…」
かずこ「そう言えば、怪我をなさったとか。そのことですか」
椎名 「大丈夫ですよ、こんなの」
楠見 「足、げしょ。早く言いなさい」
椎名 「いやあ、実はお話しが…。ずばっと言っちゃって、いいのかな」
楠見 「いや、あの、大変申し訳にくい事なんですが」
椎名 「教授が警察の人に連れていかれたんですよ」
楠見 「ちがーうっっ」
かずこ 「う、うちの父がいったいどのようなことで」
楠見 「ちょ、ちょっと待って下さい。違うんです。貴方のお父様が誠に不幸なことなんですが、心臓マヒで亡くなられたのですよ」
KP 「口元に手を当ててうつむいているね」
楠見 「いやな役…」
椎名 「すまん」
かずこ 「それで父は…。部屋には鍵がかかってたんですけど」
椎名 「警察がかけていったのかな」
楠見 「駐在の人が来たので、多分遺体はそちらの方に」
かずこ 「そうですか」
楠見 「そちらの方に向かったほうが、よろしいのではないでしょうか。なんでしたら付き添いを」
かずこ 「とりあえず中に入っていただけますか。もう少し詳しくお聞きしたいのですが」
楠見 「…では、おじゃまします」

KP 「奥の方に行くところで、目星チェック」
楠見 「16だから、成功」
椎名 「成功だよーん」
KP 「そしたら、食事の用意が一人分だと思った」

楠見 「おや、夕げの用意をなさったんですか。お父様は帰ってこないと?」
KP 「え?いいえ、でも外で食事を取るのかと思ったものですから」
楠見 「あせってる?」
KP 「心理学ある?」
楠見 「あるよ、当然」
椎名 「その前にかずこさんの性格考えて、教授の分用意しないなんてあるのかな」
KP 「前もって言われていれば、用意しないことは十分あるだろうね」
椎名 「今まででかけていてわかんないから、用意しとくんじゃないかな」
楠見 「用意してそうだよね。…15。わかるよ」
KP 「椎名さんも振ってみて」
椎名 「出れば二人いっぺんに分かる、と。…わかんないな」
KP 「そんなことしないないんじゃないかな、くらい」
楠見 「とりあえず気にはなる」
KP 「とりあえず居間の方へ。『それで、あの、どのような状態だったのですか」
楠見 「気になるんで、逐一見てます」
椎名 「僕は話す」



<< BACK / NEXT >> Ep.4 診療所は戦場のごとく

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【混沌の血脈】第1話「輝ける暗黒の書」2

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Ep.2 死体蘇生者 楠見慎太郎

楠見 「診断だあ、医学だあっ、まずはどんな情況だあっ。はい分かったぁ」
KP 「やっぱり感電しました。心臓が止まってます。」



楠見 「ちょ…ちょっと待てぇっ。応急処置か、医学か」
柊 「心臓マッサージは応急手当に入るの?」
KP 「医学」
楠見 「とりゃあっ。何とかなった。いったいどうしたんだ、この人は」
KP 「必死の心臓マッサージのかいあって、自力で心臓が動き始めたね」
楠見 「ぜいぜい、あせったなあ。あ、脈とってください」
KP 「大丈夫、息は吹き返したようだよ」
楠見 「し、しっかりしろ清四朗君」
KP 「意識がもうろうとしている」
楠見 「…。その手を出してごらん、----あ、火傷」
椎名 「実演するなって感じだね」
楓 「再演、熱演ってやつ」
楠見 「でもこういうキャラクターだよね」
KP 「駐在さんはなにしてるんだかって見てたんだろうね」
楠見 「----この電気とこの手と教授の手を考えると、直接の死因は電気ショックによる心臓まひってところですね」
KP 「そうとしか考えられませんね」
楠見 「ははは、気のあう二人」
KP 「死因はわかったとして、あとは事故か殺人かですね」
楠見 「…この電気に何かあるとして、僕でわかるかなあ。電気修理?」
KP 「この場でわかりたいんだったら、電気修理だね」
楠見 「…出るわきゃねえだろう」
椎名 「下手に見て終わりだね」
楠見 「あなたわかります?」
楓 「音だけ聞こえるけど、中が見えないよぉ~」
KP 「中の方からぐしゃとか、わあっとか聞こえるだけ」
楓 「……」
楠見 「一応応急手当だけしておきます。ダメージは?」
KP 「一回死んでますから0でしょう」
楠見 「応急手当しまーす。20、成功」
KP 「6回復」
椎名 「とりあえず、しびれて、あぁってヤツ」
楠見 「大丈夫ですか、清四郎君?」
椎名 「手…手が…。締め切り近いのに」
楠見 「ははは、手の方も治療したということで。でも全治5日ってとこですよ」
椎名 「がーん」
楠見 「…これで直接の死因は解ったとして」
KP 「これが事故であったか、誰かが事故に見せかけたかということですね」
椎名 「それは調べてもらえば済む事じゃないかな」
楠見 「私達に結果教えてくれるのかな」
椎名 「さあ、それはわかんないけど。知りたいよね」
KP 「では、ここに電気関係の技師を呼ぼう」
楓 「有る程度中の騒動は終わったのかな」
KP 「その前に、アリバイを聞きますね。二人ともは昨晩6時ごろ何をしていたかね」
椎名 「仕事をしていました」
KP 「それを証明する人は」
椎名 「い、いません。----だらだら」
KP 「ぢゃあ、『きらりんっ』てとこでしょうね」
椎名 「で、でもボクが犯人なら、ボクまで感電することはないぢゃないですかっ」
KP 「それもそうだな」
楠見 「心臓まで止まりましたからね」
椎名 「しかもボクには締め切りがあるんだ。死んでも死にきれませんよ」
KP 「ではそちらの医者は」
楠見 「5時ごろでしたら往診の時間なもので、近所を廻ってましたけど」
KP 「それでは証明する人はたくさん入る訳だな」
楠見 「まあそうでしょうね」
KP 「とりあえず、連絡先を書いておくように。と言って紙が渡されますね」
椎名 「○○区△△町。ひとまず作業は終わったのかな」
楠見 「後は技師さん待ちってところだね」
KP 「さて、駐在さん目星振ってもらいましょうか。なかなか立派な庭だなとか言ってると、頭が見える」
楓 「一応頭沈める」
楠見 「多分隠れる判定だわ」
楓 「…30。絶対成功しないよーん」
楠見・椎名「もろバレ…」
KP 「む…っ、そこにいるのは誰だ」
楓 「はっ…、何故見つかったのかしらっ。完ぺきに隠れていたはずだったのに」
椎名 「なんてボケてるんだ」
KP 「女、こんなところで何をしている」
楓 「囲いの向こうから、すっと立ち上がって名刺を渡す。私こういう者です」
楠見 「うさんくさぁ」
KP 「新聞記者か…。それが何故こんなところにいる」
楓 「駐在さんのあるところ、必ず事件有り、ですわ」
KP 「これはまだ事件と決まった訳ではない。帰りたまえ」
椎名 「しんた?」
楠見 「何ですか」
椎名 「外の方が、なんか騒がしいからさ。ちょっと見てみたいんだ」
楠見 「じゃぁ、これもお仕事っていうことで、肩貸して」
椎名 「ひょい。…あれ?楓ちゃん」
楓 「あら?椎名さん。何故あなたまでここに?」
椎名 「いや…ちょっとね。引き吊った笑いをする」
楓 「----立ち話もなんですから、そっちに参ります」
KP 「君っ、ちょっと待ちたまえ」
楠見 「知り合いかい」
椎名 「うちによく取材に来るんだ」
楠見 「女の子は苦手だとか言ってた割には、なかなかスミにおけない」
椎名 「…彼女を普通の女と思ったら甘いな、君は」
楓 「そんなこと言っている間に庭へ」
KP 「なんだきみたちは知り合いだったのかね」
楓 「特集記事で、椎名さんに取材したことがありまして」
KP 「ほう」
椎名 「一応顔は知っています」
KP 「つまり君は、第一発見者よりも後に来たということだな」
楓 「第一発見者----?何を発見したんですか」
楠見 「マヌケだ、マヌケ」
楓 「部屋の中に、何か発見するものがあったんですね。----椎名さんご存じ?」
椎名 「いやあぁ ちょっとー…。いっていいの?」
楠見 「言っていいんですか?」
KP 「言わなくてよろしいっ。この件に関しては、後々連絡があるだろうから、この場は立ち去りな…」
楠見 「実は----かくかくしかじかってことがあったんですよ。ま、詳しいことは僕にもよくわかんないんですけど」
KP 「きみっ」
椎名 「ごめんねぇ、楓ちゃん。詳しいことは話せないんだけどね、僕が呼ばれてここに来たら、教授が感電死してたんだよ」
KP 「…しっかりばらされてしまった」
楠見 「とにかく結果が出たら、僕たちにも教えていただけるんですよね」
KP 「む、そこはこちらの判断となる。まあ、あまり派手な動きや、旅などには出ないように」
楠見 「教えていただけるんでしたら。そろそろ仕事もありますので良いですか」
KP 「うむ、帰ってよろしい。君も早く帰って手を治療したまえ」
楠見 「それじゃあ、治療も完ぺきじゃないしうちへ…」
椎名 「…しんた、そのことなんだけどさ」
楠見 「なんです」
椎名 「おれ、金ないんだ」
楠見 「だと思ったよ。いーよ、出世払いでも。そのかわり給料出たら真っ先に払ってくれれば」
椎名 「うん、わかった。恩に着るよ」
楓 「毎回のことだね」
楠見 「じゃ自転車で先に帰ってるから」
椎名 「…楓ちゃーん、彼んちまで連れてってくれよ」
楓 「代わりに、今回のこと聞かせていただけますね?」
椎名 「詳しくは話せないけど。…詳しくなければいいですよね、駐在さん」
楓 「ははは、十分詳しいわ」
KP 「困り顔で、民間人があまりしゃべるものではない」
楓 「大丈夫ですよ。少しだったら全然かまいませんって」
椎名 「うん。ちょびっとだから。ちょびっと」
KP 「駐在さん頭抱えるポーズで」
楓 「こそっと『駐在さんのいないところでなら、バレないから大丈夫です』」
椎名 「大丈夫だよ、彼女口堅い方だからさ」
楓 「はい。私、絶対しゃべりません」
柊 「ブン屋の口が堅いは絶対ウソだ」
楓 「絶対、ほかの人に『しゃべる』なんてしません」
柊 「…書くんだ」
KP 「話さんのならいいだろう。とりあえず現場から出ていってよろしい」
椎名 「ちゃりんこの後ろに乗って、『じゃ、おねがい』」
楓 「しょうがありませんね。でも、非力だからよろよろ」
KP 「結局みんな楠見さんの所かな」
椎名 「うん」
   
   
   
KP 「では、無事楠見さんの診療所に着きました」
楠見 「おばーちゃんっ、そんなことしちゃダメでしょう。あー太郎君それさわっちゃ駄 目だよ」
KP 「野戦病院のようだ(^^;」
椎名 「しんたー。来たぞうー」
楠見 「裏から入って、お茶でも飲んでてくれるかなあっ」
椎名 「うん、解った。で、お茶飲みながら『どうしよう、絵かきさんの方にも一応連絡しなきゃなあ』電話あるよねえ」
楠見 「ありますけど、ちゃんと払ってくださいよ」
椎名 「出世払い、出世払い」
KP 「三吉さんのほうにありますか」
KP 「うーん、街頭テレビの状態で、どこかの家のを使わせてもらってる」
椎名 「じりじり。すみません、三吉さんおねがいします」
KP 「しばらくたつと」
三吉 「はいはい」
椎名 「あ、三吉さん。僕だけどさぁ」
三吉 「あぁ、椎名か」
椎名 「あのさ、恥ずかしながら手を火傷しちゃってさ」
三吉 「おう、それで」
椎名 「実は鉛筆が持てないんだ」
三吉 「なにっ?」
椎名 「だからサ、もしかしたら、締め切り延びるかも」
三吉 「…落とすなよぉ。おまえの仕事は大切な収入源なんだからな」
椎名 「そんなこと言われたって、編集の方にも電話かけなきゃなんないけど。かと言って、そこらへんの人に代筆してもらうのは嫌だし、どうしよう」
楠見 「しんたろーはそんなこと絶対良いとはいわない」
椎名 「締め切り延ばしてくれって言ったら、延ばしてくれるかなあ」
三吉 「知らん。とにかくやれ」
椎名 「三吉、なんか考えてくれよー」
三吉 「うーん、誰かに書かせればいいだろう」
椎名 「だれか…、誰かいるかなあ」
三吉 「それはおまえが考えろ」
椎名 「うーん、教授の知り合いは行方不明だし、聞屋には書かせたくないし…」
三吉 「とりあえず、後で行く」
椎名 「今ね、楠見診療所なんだ、わかるかなあ。◇◇区の☆☆なんだけどさあ」
楠見 「この区画に診療所は一軒しかないとおもうよ」
三吉 「楠見診療所だな。とりあえず今から行く」
椎名 「うんわかった。もしかして遠いかな」
KP 「30分くらい」
三吉 「てくてく歩いていこうか」
椎名 「この後、後編集局にも電話をかけてみるよ」
三吉 「うん」
椎名 「じゃ、また」
楠見 「あの人も大変だよな、とか言いながら、わあ、おばあちゃんっ」
椎名 「次、編集局に電話して同じ説明をする。あのぉ、大丈夫でしょうか」
KP 「締め切りは締め切りだからね」
椎名 「何とかなりませんか」
KP 「締め切りは…守るものだからね」
椎名 「どきどきどき、だらだらだら」
楠見 「…破るものだと思っていた」
椎名 「どうしたらいいでしょうか」
KP 「誰かつてでもいないのかい。いざとなったら、左手でも書きたまえ。君の作品を心待ちにしている人はたくさんいるんだよ」
椎名 「 …あんたは鬼や…」
KP 「今の世の中、仕事がなくて困っている人もいるんだ」
楠見 「----君の代わりはいくらでもいるんだよ(笑)」
KP 「まあ、頑張って書きたまえ。プツッ」
楠見 「あんまり電話使わないで下さいよ。----あーっ、太郎君駄目だよっっ」
椎名 「受話器持ったまま、独り言。『か、彼女…彼女に頼むしか…。しかし彼女の前に立ったら僕は…」
柊 「この人と面識はあるんだろうか」
椎名 「趣味読書でしょ。図書館で一目逢ったその日から、恋の花咲く事もある」
KP 「花は咲いても、実ってないと」
三吉 「ふん」
柊 「こっちはまだ気付いていないパターンだからさ」
楠見 「記者は何も行動してないの?」
楓 「電話使いたいんだけど、受話器持ったまま考えてるからさ」
楠見 「あぁ、そこの人。そこに立ってるんだったら、そこの水枕持ってきて」
楓 「は?」
楠見 「あ、そこの薬もお願いします」
楓 「は、はい?これですか」
楠見 「はい、それ。ちょっとその子の手押さえててね」
楓 「はい…はーい。痛くないからねえ」
楠見 「おわりー。はい、つぎ」
柊 「なんかやってるよ」
椎名 「三吉さんが来るまで立ったまま」
----三吉さん登場
三吉 「よう、椎名いるかぁ 」
楠見 「あ、清四朗君だったら、裏から回ってくれるかな」
三吉 「じゃあ、裏。がちゃん」
椎名 「まだ考えている」
三吉 「なした?」
椎名 「あ、三吉さん。実はちょっと考え事を」
三吉 「どうだ、決まったか」
椎名 「いやぁ、一人つてはいるんだが…」
三吉 「じゃあ、それで良いだろう」
椎名 「そう簡単に言うけど…。ちょっと頼みづらいんだよ」
三吉 「ふーん。おまえが駄目なら、俺が頼んでやろうか」
椎名 「えーっっ。い、いいのか。そんなことしてもらって。でもなぁ、彼女ってほら、人見知りするし…」
柊 「なあだかなぁ」
椎名 「多分口の中で、どーのこーの、と言ってるよ」
三吉 「この仕事落とす事考えてみろ」
椎名 「どきっ。これ落としたら一ヶ月の生活が、いや、次の仕事が来るかどうかも分からない」
楠見 「君の代わりはいっぱいいるんだよーん」
椎名 「…済まない彼女のところに一緒に言ってくれるかな」
三吉 「うん」
楠見 「電話、それとも直接?」
柊 「どうだろう、面識はある。あと、手紙のやり取りはしている」
----普通ここまでくれば、連絡先の一つ位知ってそうなものだが、椎名「そんなとこまで彼が聞けるかな」柊「彼女がそんなとこまで言えるかな」…想像はつくけどね。
楓 「本読むんだったら、図書館行けば会えるんじゃない」
三吉 「よし、じゃあ図書館に行こう」
柊 「いい友達だねえ」
楠見 「帰りにはちゃんと治療しに来るんですよ」
楓 「あれ?私にお話は…」
楠見 「あー、そこの持って来て」
楓 「はいーっ」
KP 「…苦笑」
   
   
   
KP 「はい、図書館です」
柊 「図書館の隅のほうで本を読んでいます」
椎名 「あ…あのっ、ス、スミのほうに、いるっっ」
KP 「青春だねぇ。----とは正反対」
椎名 「頼むぞ三吉さん」
三吉 「ああ、彼女か。さあこい、ぐいぐい」
KP 「引っ張っていく、筋力負けだね」
三吉 「いや、こっちの方が筋力無い。8だもん」
椎名 「10あるけど引っ張られてゆくよ」
柊 「来た気配で気付く。ふと顔を上げたら、知らない顔があるので強張る。でも、隣に知った顔があるのでちょっとほっとする」
椎名 「やややややややああ、さ…さくやさん」



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