猫屋敷+

TRPGサークル グループねこぢゃらしの活動記録

【混沌の血脈】第1話「輝ける暗黒の書」op

Opening

KP:それではみなさん、キャラクターの出来上がった方から、各々自己紹介始めてください。

A :楠見真太郎、医者です。普段はよれよれの白衣を着つつ、よろよろチャリンコに乗って診療してる。
B :椎名清四朗君です。一応童話作家、でも超貧乏。
C :柊さくや。重度の対人恐怖症ということになっています。
B :対人恐怖症?
C :凄いよ。新潟の旧家の生まれ。代々近親婚が多くて若死にが多いから、私がまだ生きているというのは、話の種となっている状態。私は母と別 の男との子だとも噂されている。
B :むつかしいね。
C :家で家事手伝いをしてこもっている。が、最近これではいけないと思っている。

D :楓幸…さちです。新聞記者をしています。いわゆるモガというやつなのかなあ。
E :坂本三吉、絵かきです。

――設定が出揃ったところで、ここからはキャラ名でお送りします。


椎名 「キーパー、スタート地点は?」
KP 「東京です。みんな関連づけをしておいてくれるかな」
楠見 「なんで東京にいるのかな」
柊  「親戚の家に投げるも同然に預けられた。父が存在を認めてくれなくて」
椎名 「はい、僕さくやさんに一目慕れでいいですか」
KP 「おお」
柊  「じゃあ、私は趣味が読書だし、椎名さんのファンで手紙も出したことがあると」
楓  「私は椎名さんの所に取材に行ったことがある」
楠見 「よし、わかった。清四朗君は貧乏だから、病気にかかっても病院にいけない。
    だから僕がボランティアで診ている」
三吉 「俺は椎名の挿絵かな」

KP 「OK。……では始めましょうか」


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【混沌の血脈】第1話「輝ける暗黒の書」1

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Ep.1 不可思議な死体


時は大正10年。

日露戦争も終わり、軍需景気も収まり、そしてまた復興がやってくる。
少しづつ需要も伸びて、人々の生活も潤い『江戸』という時代がもう遠い昔と思われ始めた時代。

帝都東京―――。

 
KP 「椎名さんの所に一通の手紙が届きます」
椎名 「なんだろう。またファンレターかなぁ。へへ」
楠見 (そんな訳ないでしょう)
KP 「表を見るとなかなかの達筆ですね。有原幸之助いう名前が書かれている」
椎名 「ファンレターをくれた人の名前は、全部覚えているはずだけど」
KP 「大丈夫知っている人。崎坂さんの所で知り合った人です。T大の教授でキリスト教の研究をしています。君の童話を気にいっていて、一年くらい親しく付き合っています。手紙には、『13日の朝、済まないがうちへ来て欲しい。会って相談したいことがある』とあるね」
椎名 「朝って何時だろう。作家の朝はいろいろあるから(苦笑)」
楓 「彼の朝は午後四時から始まる、ってか」
椎名 「締め切りあるけど…、まあ、いいかっ」

楠見  (その一言が…)
楓 (運のつき・)
KP (そして締め切りが延びてゆく)
楠見(締め切りは延びるんじゃなくて、命が縮むんだよ)

椎名 「……。とりあえず、それしか書いてないの?」
KP 「うん。----目星になるかな」
椎名 「目星?成功」
KP 「かなり文字が乱れてます。急いで書いたようですね」
椎名 「珍しいなぁ、あのマメな人が…。急いでるみたいだから9時に行こうと思っていたけど8時に行こうかな」
KP 「はい。ちなみに今は夕方です」
椎名 「ポケットから財布出して『今夜も水だけか…』」
楠見 「来たら食べさせてあげるますよ」
椎名 「多分行けないよぉ。ただで診てもらっている手前…」
KP&楠見 (苦笑)
   
KP 「さて、13日の朝です」
椎名 「なんとか起きれた。相も変わらずよれよれの着物を着て、げたを鳴らしながら行きます」
KP 「何度も行っているので家はわかる。すると朝早いのにカーテンが開いている」
椎名 「教授って言うからには、大きな家なんだろうね」
KP 「いや平屋建。この時代にありがちな和洋折中の家に、父と娘の二人暮らしだよ」
椎名 「なんとなく雰囲気が違うって感じ?」
KP 「うん」
椎名 「ふーん。教授にしては珍しく寝ているのかもしれないな。…ピンポーンかなチリンチリンかな」
三吉 「『ガンガン』だろう」
椎名 「がんがん。教授ー、呼ばれたから来たよ」
KP 「出てくる気配はないね」
椎名 「んー、庭とか、縁側に回ってみる」
KP 「庭の構造はこうなってて、サザエさんに出てくる、あの、窓じゃなくて…」
全員 「雨戸っ」
KP 「…は開いているが、動いている気配はない」
椎名 「ひざで上って行って、『教授ー、教授ー』」
KP 「反応はない」
椎名 「うーん、じゃ割りと親しい仲だったと言うことで、足の裏をちょこちょこと拭いて上がってく」
KP 「扉を開けると教授が部屋の床で寝ていますね」
椎名 「教授、こんなところでねてたら風邪引きますよ。って入っていく」
KP 「うんとね、仰向けでこんな感じ。手前にベットがあるから足が見えている」
椎名 「教授ってば寝相わるいなあ。ゆさゆさ」
KP 「洋服を着ています。普段着ている背広だね」
椎名 「…教授、寝相悪い上に、目開けて寝てるよ」
KP 「分からないのかな」
椎名 「頭いいけどボケなんだよ。で、これは偏見じゃないけど…田舎ボケしてんだよ」
KP 「それが偏見では…」
楠見 「まあ、死体なんかは見たことない、と」
椎名 「で、ゆさゆさってしたら、ひんやりとするんだよ。か…堅い、きょうじゅ…?」
KP 「体が重い。間接がうまく動かない」
椎名 「とりあえず、なんか変だなあ、と思う」
KP 「しまったぁ。そうゆうのも分からないか。そうだね、反応は無いね。寝ているとしたら爆睡だ」
椎名 「じゃ、とりあえず最初に娘さんの部屋に行ってみる。ノックノック」
KP 「うーん、目星振って下さい」
椎名 「女の子に対して面識ないからな。はっ…59」
KP 「反応はないね」
椎名 「とりあえず部屋じゃないと思って、台所の方に行ってみる。娘さんの名前は?」
KP 「かずこさん」
椎名 「かずこさーん、かずこさーん」
KP 「台所には誰もいません」

――この後何故か風呂、トイレ、居間の順に回る清四朗君。普通は逆では…?
  しかし。かずこさんは何処にもいない。

椎名 「やっぱり部屋しかないと思って『失礼します』ってそーっと開ける」
KP 「誰もいないね。布団はひいていない」
椎名 「いないってことは出掛けた後?」
KP 「とりあえずここにはいないということがはっきりしたね」
椎名 「うーん。電話ある?」
KP 「うん、ついてる」
椎名 「じゃあ、医者のところについてるかな」
楠見 「つけてるんじゃないかなお金ためて」
椎名 「じゃりじゃりじゃり。しんたー、しんたー」
楠見 「8時だっけ。起きてるね。あ、椎名さんか、清四朗君どうしたんだい」
椎名 「あのさ、有原っていうT大の教授知ってるかな」
楠見 「ああ、宗教学の」
椎名 「そうそう、キリスト教の研究をしている。その人のうち知ってる?」
楠見 「知ってる訳ないだろう、僕は医学部だよ」
椎名 「世田谷の☆☆なんだけどさ。教授、凄い爆睡こいてるから、見にきてほしいんだけどな」
楠見 「爆睡?ちゃんと起こしましたか」
椎名 「うん、揺すってみたんだけど起きなくってね」
楠見 「もしかして、一瞬脳卒中とかかなと思って『いびき、かいてますか?』」
椎名 「いや、いびきはかいてないよ」
楠見 「いびきをかいていない…。ひょっとして君揺すりましたかっ?」
椎名 「あ、ゆすっちゃった…」
楠見 「『だ…駄目じゃないですかっ』まさか死んでるとは思わない。ここから世田谷までどれくらいですか」
KP 「30分くらいかな」
楠見 「とりあえず吐いたら困るから顔を横に向けて安静にしておきなさい。動かさないで。僕すぐ行くから」
椎名 「うん」
楠見 「動かしたら駄目だよ。脳障害かもしれないから」
椎名 「う、動かさない?首が曲がんなかったらどうすんの」
楠見 「はい?曲がらないわけないでしょう。仮にも生きている人間が」
椎名 「あ、そうか」
楠見 「そっと動かすんですよ。今行きますからね。って鞄持って白衣を着て、自転車」
椎名 「その頃、顔が曲がんなくて、んっ、んっ、てやっている」

楓 (いや、勢い余ってバキッとか)

椎名 「非力だからないと思う。冷たいから暖めなくて大丈夫かなあ。とりあえず毛布かけとこ」
楠見 「迷わないで行けるかなあ」
KP 「東京長いなら大丈夫でしょう」
椎名 「キキーッて音を聞いて、縁側からしんたーって呼ぶ」
楠見 「その呼びかたはやめてくれないかなあ、五つ上に向かって。まあいいか。教授はどこですか」
椎名 「こっちこっち」
楠見 「縁側から靴脱いで上がる」
椎名 「なんかさ冷たかったから毛布かけといたんだよ」
楠見 「うん、賢明な判断だよ。あーっ首曲げてないじゃないか」
椎名 「だって曲がんなかったんだよ」
楠見 「…はい?」
椎名 「やってみなよ。曲がんないからさぁ。って、ちょっと怒ってる」
楠見 「…毛布をどけていろいろなことを試す。心臓----動いてない。…死んでるじゃないですかっ。しかも死後硬直が始まっているじゃないですかっっ」
椎名 「え?」
楠見 「死んでるでしょう。脈はない。瞳孔は開いている。息もしてない。どうやって生きてるんですかっ」
椎名 「いや、だって、寝てるのかと思って…」
楠見 「ふーん、そうか。君は脈止めて、息止めて、心臓止めて寝るんだ」
椎名 「だらだらだら」
楠見 「うーん。ここ電話あるんだろう。とにかく駐在さんに連絡してくれ。僕はとりあえず見てるよ」
椎名 「じゃ、駐在に電話かける。じりじり『すみません、世田谷の有原さんちに死体があるんです』」
駐在 「し…死体??とりあえず事件なのかな」
椎名 「あ、すみません。教授死んじゃったんです」
楠見 「たったった、がしゃっ。すみません。今ここT大の有原教授宅なんですが、家主の教授がここに来たらいきなり死んでるもので来て欲しいんですっ」
駐在 「ようやく話の通じる人になった、とりあえず駐在を一人送ろう」
楠見 「じゃあ、お願いします。こちらで待ってますので」
駐在 「現場は保存しておくように。自然死か否かの判断が出来なくなるからね」
楠見 「僕も自然死かどうかの判定は出来るよね」
KP 「医学でお願いします」
楠見 「失敗はありえないんだよね。85あるし」
KP 「えーとショック状態で死んでいる」
楠見 「驚がく?じゃあ、びっくり顔かい。それでなんで寝てると思うんだい」
椎名 「最初描写しなかったよ。僕も聞かなかったけどさ」
楠見 「外傷は見当たらないの?」
KP 「もう一回医学振ってくれるかな」
楠見 「39、成功」
KP 「指先に火傷の跡が見える」
楠見 「指先?指の形の状況としては?」
KP 「右手で何かをつかむような感じ」
楠見 「手の平はなし?」
KP 「そうだね、中指、人差し指、親指がやけている」
楠見 「ずばり何度?」
KP 「1~2ってところ」
楠見 「水ぶくれから、あかむけかな。これが直接の死因…だったら怖いよね。有原教授は心臓が弱かったかい」
椎名 「いいや。薬とかも飲んでんでなかったし」
楠見 「じゃあ、周りに何か目につきそうなものはあるかな」
KP 「ぱっと見たところないよ。普通の書斎謙寝室」
楠見 「うーんなにもないね。この火傷は新しいの?」
KP 「新しいね。手当された形跡もない。死後硬直も始まっている。背中の方に死斑があるから、動かされたこともないようだ」
椎名 「僕昨日教授から手紙もらったんだけどな」
楠見 「昨日?どんな用だったんだい」
椎名 「ただ単に今日うちに来てくれって。あ、そのときはあまり気にしなかったけど字が汚かったな…」
楠見 「なにかあったのかな」
椎名 「もしかして何か関係あるのか?」
楠見 「いや、わからないよ僕には。とにかく娘さんがいるなら、彼女に聞いてみるしかないんだろうし、どのみち連絡しないと」
椎名 「かずこさんは学校行ってる?」
KP 「いや、中学卒業した段階で、家事手伝いだね」
椎名 「じゃあ、出掛けているとしたら稽古事か、友人宅かってとこかな」
楠見 「じゃあ、遅くとも午後には帰って来るだろうから、後は警察に任せたほうがいいだろう」
KP 「と言っている間に駐在が届きました。とんとん」
楠見 「とどいたって…」
楓 「クール宅急便かい」
椎名 「あ、僕触ったけど犯人じゃないよ」
楠見 「今更なんですか。あ、開いてますよ」
KP 「がたがたと開けようとしているけれど開かないね」
楠見 「おや…?清四郎くん玄関から入らなかったんですか」
椎名 「僕?僕はちょっと縁側の方から…」
楠見 「泥棒みたいなことを。今開けますよ。かちゃ」
駐在 「死体というのはどこかね」
楠見 「こちらです。と洋室に案内する」
駐在 「ざーっと眺めた後『君は見たところ医者のようだが、これをどう判断するね』」
楠見 「かくかくしかじか、と思ったんですけどね」
駐在 「では、自然死の可能性の方が強いということだな」
楠見 「ショック死が自然死と言うのならね…、でもまあ、無難にそうでしょうね。と言っておこう」
駐在 「ま、こちらのほうでも検視官を呼ぼう」
楠見 「はい、お願いします」
駐在 「----さて、第一発見者は君だな」
椎名 「あ、はい、そうです」
駐在 「死体を発見したときの状況はどうだったんだね」
椎名 「このまんま。とりあえずこのまんまでした」
楠見 「あの、ちょっと彼が寝ていると思って毛布をかけてしまったんですが、なにぶん死体を見たことがなくて----直接遺体の保存に影響は無いと思います」
KP 「これだから田舎者はっ。東京にもすっかり田舎者が多くなったな」
椎名 「す、すいません。僕、秋田出身なんです」
楠見 「すでになまってるよ(笑)」

――田舎者は死体を見たことがないのか?田舎の方が葬式は多いぞ。

楓 「花に囲まれてないと死体じゃない。と」
楠見 「白い布かぶってないと駄目みたいだね」

――納得

KP 「駐在さんはじっと見ている」
椎名 「その間も汗ダラダラ」
楠見 「元気出せよ。君が悪いわけじゃないんだから」
椎名 「うん、なんとか。でも途中で倒れそう」
KP 「どこまで話す?ここに来た情況とかも話す?」
椎名 「多分聞かれたらしゃべるだろうね」
KP 「ふむふむ。でしばらくすると、検視官がやって来る」
楠見 「ごくろうさまです」
検視官 「おや、貴方も医者ですか」
楠見 「はいまだ未熟者ですが」
検視官 「----もうちょっと早く来ていれば、この方も助かったでしょうね。…せめて10時間前に」
楠見 「それがちょっとか?」

楓 「はいっ。KP、この家に塀ってあるの?」
KP 「塀?あるけど、なんで?」
楓 「それによって隠れかたが変わるんです」
楠見 「隠れかた? いままで?」
楓 「駐在さんが動いたのをかぎつけてから、急いで自転車で移動」
楠見 「なんか自転車使用者多いね。アクティブだなあ」
楓 「でも、すぐに乗り込んで行く訳にもいかないから、まず隠れて聞き耳をたてるつもりだけど」
三吉 「よおし、じゃあ池に隠れよう」
KP 「こらこら。じゃあ、聞き耳から」
楓 「聞き耳からでいいんだ。成功。これ以降の会話は聞いてることにするね」

楠見 「今検死してる人の見立てを聞きたいね」
検視官「だいだい死後13~15時間ていうところでしょう。つまり死亡時刻は12日の午後5時から7時の間と考えられます」
楠見 「何故その時間に娘さんがいなかった、不思議ですね」
検視官 「死因は心臓まひでしょう」
楓 「見ただけで解るの?」
検視官「特徴を見たら心臓マヒとしか考えられない。でもね、心臓マヒっていうのは何にでも使えるんだよ」
楠見 「そこがいいんだけど。しかし心臓が悪かったという話しは聞かないんですよ」
検視官「それは確かなことですか」
椎名 「うん、この前会ったときも元気だったよ。ガハガハ笑ってた」
検視官「心臓の悪い人はガハガハ笑えないという訳じゃないのだが」
楠見 「それはその通りですが、彼も作家なので見聞に間違いは無いでしょう」
検視官「それにしても変わった死体ですね。この火傷など」
楠見 「ああ、それは僕も気になっていたんです」
検視官「これだけの火傷をしていながら、なにも処置をしていない。大学教授ともなれば、書きものや何かもするだろうにねぇ」
楠見 「最初うっかり火傷したショックで死んだのかとも思いましたよ」
検視官「うーん、火傷でショック死と言うのは聞かないが」
楠見 「だから心臓が悪いのかと思ったんですが…」

椎名 「部屋の中に駐在さんいっぱいいる?」
検視官「いや、駐在さん二人に検死官一人」
椎名 「じゃあ、部屋の中見て回れるかな」
検視官「見て回るくらいなら」
椎名 「机の上をみる。手の形から書き物でもしてたんじゃないかなと思ってさ」
検視官「ものを書いていた形跡はあるけど、商売だからね。ごく最近書いていた形跡はないよ」
楠見 「倒れた情況とか推測出来ないかな」
KP 「普通に倒れてる。後頭部が腫れているかもしれないけど、それが直接の死因じゃない」
楠見 「周囲には何も落ちてないんだね」
椎名 「ちょっと電球の当たりを見ようとする」
KP 「電球のあたり?」
椎名 「もしかしたら電球の球取ろうとして、感電したのかもしれないしさ」
楠見 「感電はしていなくてもやけどはしたかもね」
KP 「電気修理振ってくれる」
椎名 「んなもん取ってないよ。20か…でたっ」
KP 「ひねるタイプのスイッチなんだけど、普通と違う」
椎名 「斜めになってるの?」
KP 「いや、自分が知っている配線じゃない。というやつ」
椎名 「勝手に触ろうとする。背高いから余裕で届くね」
KP 「じゃ、じゃあスイッチ触る?どきどき。じゃぁ…」
楠見 「----どかんと一発っ」
全員 「やってみよーおよーっ」
KP 「ちょ…ちょっと待った。その前に幸運ロールだ」
椎名 「幸運?ははは98」
楠見 「さよなら、短いつきあいだったね。大丈夫。ここ医者二人もいるから」
KP 「じゃ、そのスイッチに触れた途端、なにか体の中を走った気がする。そのまま動きが止まって、後ろに倒れていくような気が…」
椎名 「…教授と同じ位置じゃない?」
楠見 「で、こっちが二人で検死している時に」
三吉 「影がうぃーんて大きくなって」
楠見 「ごいんっっ。おわっ。で、二人して死体にぐしょ。『いたい…。ど、どいて下さいよ』」
検視官「どうしたんですかっ」
柊 「意識あるのかなあ」
楠見 「診断だあ、医学だあっ、まずはどんな情況だあっ。はい分かったぁ」
KP 「やっぱり感電しました。心臓が止まってます。」



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【混沌の血脈】第1話「輝ける暗黒の書」2

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Ep.2 死体蘇生者 楠見慎太郎

楠見 「診断だあ、医学だあっ、まずはどんな情況だあっ。はい分かったぁ」
KP 「やっぱり感電しました。心臓が止まってます。」



楠見 「ちょ…ちょっと待てぇっ。応急処置か、医学か」
柊 「心臓マッサージは応急手当に入るの?」
KP 「医学」
楠見 「とりゃあっ。何とかなった。いったいどうしたんだ、この人は」
KP 「必死の心臓マッサージのかいあって、自力で心臓が動き始めたね」
楠見 「ぜいぜい、あせったなあ。あ、脈とってください」
KP 「大丈夫、息は吹き返したようだよ」
楠見 「し、しっかりしろ清四朗君」
KP 「意識がもうろうとしている」
楠見 「…。その手を出してごらん、----あ、火傷」
椎名 「実演するなって感じだね」
楓 「再演、熱演ってやつ」
楠見 「でもこういうキャラクターだよね」
KP 「駐在さんはなにしてるんだかって見てたんだろうね」
楠見 「----この電気とこの手と教授の手を考えると、直接の死因は電気ショックによる心臓まひってところですね」
KP 「そうとしか考えられませんね」
楠見 「ははは、気のあう二人」
KP 「死因はわかったとして、あとは事故か殺人かですね」
楠見 「…この電気に何かあるとして、僕でわかるかなあ。電気修理?」
KP 「この場でわかりたいんだったら、電気修理だね」
楠見 「…出るわきゃねえだろう」
椎名 「下手に見て終わりだね」
楠見 「あなたわかります?」
楓 「音だけ聞こえるけど、中が見えないよぉ~」
KP 「中の方からぐしゃとか、わあっとか聞こえるだけ」
楓 「……」
楠見 「一応応急手当だけしておきます。ダメージは?」
KP 「一回死んでますから0でしょう」
楠見 「応急手当しまーす。20、成功」
KP 「6回復」
椎名 「とりあえず、しびれて、あぁってヤツ」
楠見 「大丈夫ですか、清四郎君?」
椎名 「手…手が…。締め切り近いのに」
楠見 「ははは、手の方も治療したということで。でも全治5日ってとこですよ」
椎名 「がーん」
楠見 「…これで直接の死因は解ったとして」
KP 「これが事故であったか、誰かが事故に見せかけたかということですね」
椎名 「それは調べてもらえば済む事じゃないかな」
楠見 「私達に結果教えてくれるのかな」
椎名 「さあ、それはわかんないけど。知りたいよね」
KP 「では、ここに電気関係の技師を呼ぼう」
楓 「有る程度中の騒動は終わったのかな」
KP 「その前に、アリバイを聞きますね。二人ともは昨晩6時ごろ何をしていたかね」
椎名 「仕事をしていました」
KP 「それを証明する人は」
椎名 「い、いません。----だらだら」
KP 「ぢゃあ、『きらりんっ』てとこでしょうね」
椎名 「で、でもボクが犯人なら、ボクまで感電することはないぢゃないですかっ」
KP 「それもそうだな」
楠見 「心臓まで止まりましたからね」
椎名 「しかもボクには締め切りがあるんだ。死んでも死にきれませんよ」
KP 「ではそちらの医者は」
楠見 「5時ごろでしたら往診の時間なもので、近所を廻ってましたけど」
KP 「それでは証明する人はたくさん入る訳だな」
楠見 「まあそうでしょうね」
KP 「とりあえず、連絡先を書いておくように。と言って紙が渡されますね」
椎名 「○○区△△町。ひとまず作業は終わったのかな」
楠見 「後は技師さん待ちってところだね」
KP 「さて、駐在さん目星振ってもらいましょうか。なかなか立派な庭だなとか言ってると、頭が見える」
楓 「一応頭沈める」
楠見 「多分隠れる判定だわ」
楓 「…30。絶対成功しないよーん」
楠見・椎名「もろバレ…」
KP 「む…っ、そこにいるのは誰だ」
楓 「はっ…、何故見つかったのかしらっ。完ぺきに隠れていたはずだったのに」
椎名 「なんてボケてるんだ」
KP 「女、こんなところで何をしている」
楓 「囲いの向こうから、すっと立ち上がって名刺を渡す。私こういう者です」
楠見 「うさんくさぁ」
KP 「新聞記者か…。それが何故こんなところにいる」
楓 「駐在さんのあるところ、必ず事件有り、ですわ」
KP 「これはまだ事件と決まった訳ではない。帰りたまえ」
椎名 「しんた?」
楠見 「何ですか」
椎名 「外の方が、なんか騒がしいからさ。ちょっと見てみたいんだ」
楠見 「じゃぁ、これもお仕事っていうことで、肩貸して」
椎名 「ひょい。…あれ?楓ちゃん」
楓 「あら?椎名さん。何故あなたまでここに?」
椎名 「いや…ちょっとね。引き吊った笑いをする」
楓 「----立ち話もなんですから、そっちに参ります」
KP 「君っ、ちょっと待ちたまえ」
楠見 「知り合いかい」
椎名 「うちによく取材に来るんだ」
楠見 「女の子は苦手だとか言ってた割には、なかなかスミにおけない」
椎名 「…彼女を普通の女と思ったら甘いな、君は」
楓 「そんなこと言っている間に庭へ」
KP 「なんだきみたちは知り合いだったのかね」
楓 「特集記事で、椎名さんに取材したことがありまして」
KP 「ほう」
椎名 「一応顔は知っています」
KP 「つまり君は、第一発見者よりも後に来たということだな」
楓 「第一発見者----?何を発見したんですか」
楠見 「マヌケだ、マヌケ」
楓 「部屋の中に、何か発見するものがあったんですね。----椎名さんご存じ?」
椎名 「いやあぁ ちょっとー…。いっていいの?」
楠見 「言っていいんですか?」
KP 「言わなくてよろしいっ。この件に関しては、後々連絡があるだろうから、この場は立ち去りな…」
楠見 「実は----かくかくしかじかってことがあったんですよ。ま、詳しいことは僕にもよくわかんないんですけど」
KP 「きみっ」
椎名 「ごめんねぇ、楓ちゃん。詳しいことは話せないんだけどね、僕が呼ばれてここに来たら、教授が感電死してたんだよ」
KP 「…しっかりばらされてしまった」
楠見 「とにかく結果が出たら、僕たちにも教えていただけるんですよね」
KP 「む、そこはこちらの判断となる。まあ、あまり派手な動きや、旅などには出ないように」
楠見 「教えていただけるんでしたら。そろそろ仕事もありますので良いですか」
KP 「うむ、帰ってよろしい。君も早く帰って手を治療したまえ」
楠見 「それじゃあ、治療も完ぺきじゃないしうちへ…」
椎名 「…しんた、そのことなんだけどさ」
楠見 「なんです」
椎名 「おれ、金ないんだ」
楠見 「だと思ったよ。いーよ、出世払いでも。そのかわり給料出たら真っ先に払ってくれれば」
椎名 「うん、わかった。恩に着るよ」
楓 「毎回のことだね」
楠見 「じゃ自転車で先に帰ってるから」
椎名 「…楓ちゃーん、彼んちまで連れてってくれよ」
楓 「代わりに、今回のこと聞かせていただけますね?」
椎名 「詳しくは話せないけど。…詳しくなければいいですよね、駐在さん」
楓 「ははは、十分詳しいわ」
KP 「困り顔で、民間人があまりしゃべるものではない」
楓 「大丈夫ですよ。少しだったら全然かまいませんって」
椎名 「うん。ちょびっとだから。ちょびっと」
KP 「駐在さん頭抱えるポーズで」
楓 「こそっと『駐在さんのいないところでなら、バレないから大丈夫です』」
椎名 「大丈夫だよ、彼女口堅い方だからさ」
楓 「はい。私、絶対しゃべりません」
柊 「ブン屋の口が堅いは絶対ウソだ」
楓 「絶対、ほかの人に『しゃべる』なんてしません」
柊 「…書くんだ」
KP 「話さんのならいいだろう。とりあえず現場から出ていってよろしい」
椎名 「ちゃりんこの後ろに乗って、『じゃ、おねがい』」
楓 「しょうがありませんね。でも、非力だからよろよろ」
KP 「結局みんな楠見さんの所かな」
椎名 「うん」
   
   
   
KP 「では、無事楠見さんの診療所に着きました」
楠見 「おばーちゃんっ、そんなことしちゃダメでしょう。あー太郎君それさわっちゃ駄 目だよ」
KP 「野戦病院のようだ(^^;」
椎名 「しんたー。来たぞうー」
楠見 「裏から入って、お茶でも飲んでてくれるかなあっ」
椎名 「うん、解った。で、お茶飲みながら『どうしよう、絵かきさんの方にも一応連絡しなきゃなあ』電話あるよねえ」
楠見 「ありますけど、ちゃんと払ってくださいよ」
椎名 「出世払い、出世払い」
KP 「三吉さんのほうにありますか」
KP 「うーん、街頭テレビの状態で、どこかの家のを使わせてもらってる」
椎名 「じりじり。すみません、三吉さんおねがいします」
KP 「しばらくたつと」
三吉 「はいはい」
椎名 「あ、三吉さん。僕だけどさぁ」
三吉 「あぁ、椎名か」
椎名 「あのさ、恥ずかしながら手を火傷しちゃってさ」
三吉 「おう、それで」
椎名 「実は鉛筆が持てないんだ」
三吉 「なにっ?」
椎名 「だからサ、もしかしたら、締め切り延びるかも」
三吉 「…落とすなよぉ。おまえの仕事は大切な収入源なんだからな」
椎名 「そんなこと言われたって、編集の方にも電話かけなきゃなんないけど。かと言って、そこらへんの人に代筆してもらうのは嫌だし、どうしよう」
楠見 「しんたろーはそんなこと絶対良いとはいわない」
椎名 「締め切り延ばしてくれって言ったら、延ばしてくれるかなあ」
三吉 「知らん。とにかくやれ」
椎名 「三吉、なんか考えてくれよー」
三吉 「うーん、誰かに書かせればいいだろう」
椎名 「だれか…、誰かいるかなあ」
三吉 「それはおまえが考えろ」
椎名 「うーん、教授の知り合いは行方不明だし、聞屋には書かせたくないし…」
三吉 「とりあえず、後で行く」
椎名 「今ね、楠見診療所なんだ、わかるかなあ。◇◇区の☆☆なんだけどさあ」
楠見 「この区画に診療所は一軒しかないとおもうよ」
三吉 「楠見診療所だな。とりあえず今から行く」
椎名 「うんわかった。もしかして遠いかな」
KP 「30分くらい」
三吉 「てくてく歩いていこうか」
椎名 「この後、後編集局にも電話をかけてみるよ」
三吉 「うん」
椎名 「じゃ、また」
楠見 「あの人も大変だよな、とか言いながら、わあ、おばあちゃんっ」
椎名 「次、編集局に電話して同じ説明をする。あのぉ、大丈夫でしょうか」
KP 「締め切りは締め切りだからね」
椎名 「何とかなりませんか」
KP 「締め切りは…守るものだからね」
椎名 「どきどきどき、だらだらだら」
楠見 「…破るものだと思っていた」
椎名 「どうしたらいいでしょうか」
KP 「誰かつてでもいないのかい。いざとなったら、左手でも書きたまえ。君の作品を心待ちにしている人はたくさんいるんだよ」
椎名 「 …あんたは鬼や…」
KP 「今の世の中、仕事がなくて困っている人もいるんだ」
楠見 「----君の代わりはいくらでもいるんだよ(笑)」
KP 「まあ、頑張って書きたまえ。プツッ」
楠見 「あんまり電話使わないで下さいよ。----あーっ、太郎君駄目だよっっ」
椎名 「受話器持ったまま、独り言。『か、彼女…彼女に頼むしか…。しかし彼女の前に立ったら僕は…」
柊 「この人と面識はあるんだろうか」
椎名 「趣味読書でしょ。図書館で一目逢ったその日から、恋の花咲く事もある」
KP 「花は咲いても、実ってないと」
三吉 「ふん」
柊 「こっちはまだ気付いていないパターンだからさ」
楠見 「記者は何も行動してないの?」
楓 「電話使いたいんだけど、受話器持ったまま考えてるからさ」
楠見 「あぁ、そこの人。そこに立ってるんだったら、そこの水枕持ってきて」
楓 「は?」
楠見 「あ、そこの薬もお願いします」
楓 「は、はい?これですか」
楠見 「はい、それ。ちょっとその子の手押さえててね」
楓 「はい…はーい。痛くないからねえ」
楠見 「おわりー。はい、つぎ」
柊 「なんかやってるよ」
椎名 「三吉さんが来るまで立ったまま」
----三吉さん登場
三吉 「よう、椎名いるかぁ 」
楠見 「あ、清四朗君だったら、裏から回ってくれるかな」
三吉 「じゃあ、裏。がちゃん」
椎名 「まだ考えている」
三吉 「なした?」
椎名 「あ、三吉さん。実はちょっと考え事を」
三吉 「どうだ、決まったか」
椎名 「いやぁ、一人つてはいるんだが…」
三吉 「じゃあ、それで良いだろう」
椎名 「そう簡単に言うけど…。ちょっと頼みづらいんだよ」
三吉 「ふーん。おまえが駄目なら、俺が頼んでやろうか」
椎名 「えーっっ。い、いいのか。そんなことしてもらって。でもなぁ、彼女ってほら、人見知りするし…」
柊 「なあだかなぁ」
椎名 「多分口の中で、どーのこーの、と言ってるよ」
三吉 「この仕事落とす事考えてみろ」
椎名 「どきっ。これ落としたら一ヶ月の生活が、いや、次の仕事が来るかどうかも分からない」
楠見 「君の代わりはいっぱいいるんだよーん」
椎名 「…済まない彼女のところに一緒に言ってくれるかな」
三吉 「うん」
楠見 「電話、それとも直接?」
柊 「どうだろう、面識はある。あと、手紙のやり取りはしている」
----普通ここまでくれば、連絡先の一つ位知ってそうなものだが、椎名「そんなとこまで彼が聞けるかな」柊「彼女がそんなとこまで言えるかな」…想像はつくけどね。
楓 「本読むんだったら、図書館行けば会えるんじゃない」
三吉 「よし、じゃあ図書館に行こう」
柊 「いい友達だねえ」
楠見 「帰りにはちゃんと治療しに来るんですよ」
楓 「あれ?私にお話は…」
楠見 「あー、そこの持って来て」
楓 「はいーっ」
KP 「…苦笑」
   
   
   
KP 「はい、図書館です」
柊 「図書館の隅のほうで本を読んでいます」
椎名 「あ…あのっ、ス、スミのほうに、いるっっ」
KP 「青春だねぇ。----とは正反対」
椎名 「頼むぞ三吉さん」
三吉 「ああ、彼女か。さあこい、ぐいぐい」
KP 「引っ張っていく、筋力負けだね」
三吉 「いや、こっちの方が筋力無い。8だもん」
椎名 「10あるけど引っ張られてゆくよ」
柊 「来た気配で気付く。ふと顔を上げたら、知らない顔があるので強張る。でも、隣に知った顔があるのでちょっとほっとする」
椎名 「やややややややああ、さ…さくやさん」



<< BACK / NEXT >>Ep.3 たとえ心臓が止まっても、恋はハートでするものさ

【混沌の血脈】第1話「輝ける暗黒の書」3

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Ep.3 たとえ心臓が止まっても、恋はハートでするものさ

椎名 「やややややややああ、さ…さくやさん」
KP 「・・・・・」



柊 「どうなすったんですか、(三吉を見て)…こちらのかたは?」
三吉 「私は椎名の友人で、童話の挿絵を書いてます、坂本 三吉といいます」
柊 「『柊さくやと申します。はじめまして』 でもまだ顔が こわばってる」
三吉 「実はですね、椎名がちょいと右手を怪我しましてね」
柊 「まあ、それは大変ですわね。お仕事は大丈夫ですの」
椎名 「だだだだぢじょうーぶ、ですよ、はははは」
三吉 「これが大丈夫じゃないんですよ」
柊 「はあ」
三吉 「つまりですね、彼の代わりに童話を書いて欲しいの ですよ」
柊 「え、私がですか」
三吉 「ああ、ちょっと言い方が変でしたね。つまり、彼が 話す、貴方が書くということです」
柊 「代筆ということですわね」
椎名 「思いっきり首を振る」
柊 「…はい、わかりました。私でよろしければ」
椎名 「多分その後にへらーって笑うと思う」
柊 「では、どちらのほうで」
椎名 「病院で書くだろうから、自分の住所と、診療所の住所と、楠見さんの名前を書いて、三吉さんに渡す。 『これ、おれんち、こっち、あいつんち』」
楠見 「あんたは蛮族か」
三吉 「はい。これが連絡先」
柊 「これはいつから始めたらよいのでしょう」
椎名 「あ、あしたからお願いしますっ。声が裏返ってる」
柊 「わかりました。にっこり」
椎名 「じゃあ、その診療所の所にいると思いますからー。 またあしたっ。って言って走り去る」
柊 「去っていったので、呆然とするかも」
三吉 「…それじゃあ、お願いしますね」
柊 「はい」

楠見 「はあ、人がすいた。清四朗君ほっといてごめんね。そろそろ…あれ、清四朗君どこいったんだい」
楓 「さっき出掛けましたけど?」
楠見 「もっと早く言ってよ。彼はあれでも重病人なだよ。心臓が停まったんだからね、さっきは」
楓 「まあ、そんな事とはつゆしらず」
椎名 「しばらくしたら帰ってくる」
KP 「椎名さん、家から原稿とか取ってきたりしないの」
楠見 「三吉さんに取ってきてもらえば」
三吉 「とりあえず、診療所に戻る」
楠見 「いやあ、なにやってたんですか、清四朗君」
椎名 「いやあ、ちょっと」
楠見 「やけどは早いうち治療しないと治りが遅いよ。全治一週間になっても知らないからね」
椎名 「全治一週間…。そしたら一週間彼女に会えるんだ」
楠見 「とりあえず今日一日は、安静にしていること。まあ、ご飯は何とかしよう」
椎名 「僕…白いご飯が食べたいな。ここ一週間まともな物食べてない」
楠見 「今月の給料、半分まわしてくれるなら構わないよ」
椎名 「半分はちょっときついんだよな」
楠見 「…君は何年ためてるんだい。ツケ。そろそろ僕にも我慢の限界ってものがあるよ」
椎名 「それは…細々とした生活費から一生懸命」
楠見 「出してもらってないんだよう」
椎名 「本人出しているつもり」
柊 「そして毒メシに格下げか」
楠見 「まあ、いいよ今日は。ぷんぷん」
椎名 「ううっ、すまないな、しんた。」
楠見 「にしても、今日は随分早く仕事が終わったな。人を使ったということに気付いていない」
楓 「ひどい」
楠見 「じゃ、そろそろご飯にしようか」
楓 「あの…、お話は」
椎名 「なんだっけ」
楠見 「君ぃー、死にかけたこと忘れちゃ駄目だよ。心臓が停まったんだよ」
椎名 「うん、彼岸は見えなかったよ」
楠見 「そ、そうか」
楓 「じゃあ、あの時の奇妙なうめき声は貴方でしたか」
椎名 「ちょっと感電しちゃってね。なんかこうビリッとしたと思ったら、目の前真っ暗になってね。気がついたら、焦ってるしんたと検死官がいたんだよ」
楠見 「さすがに心臓が停まったときは僕もびっくりした」
楓 「聞いたらなんでも話してくれるんだろうか」
楠見 「もちろん。タブーがないから。でも新聞記事として発表できるような内容じゃないと思いますよ」
楓 「まあ、そこらへんは多少手を…。はっ」
楠見 「まあ、僕はいいけど。お巡りさんに止められてからじゃ遅いからさ」
椎名 「だけど、しゃべるんだろうね。朝教授に呼ばれて…べらべら」
楓 「教授は普段どんな人だったんでしょうか」
椎名 「明るくて、人望もあって、いい人だったよ」
KP 「うん。学会でも認められてて、ついこの間も中東の方に、キリスト教についての調査に行ってきたよ」
椎名 「多分、出会ったときのことまで、しゃべっている」
楓 「全部メモしてんだろうね」
楠見 「二人とも頭悪そう」
楓 「ははは、はっ、夕刊に間に合わない。どうしてこんな時間に」
楠見 「そう言えば何故ここにいらっしゃるんです?」
楓 「この話をうかがうためですっ」
椎名 「そう言えば楓ちゃん使われてたよね」
楠見 「誰に」
椎名 「しんた。すごいこき使ってたじゃん。シロウトを」
楠見 「おぼえてないよ、そんなこと」
椎名 「んー、タダ働きだったよ、楓ちゃん」
楠見 「どうりで今日は能率が良かったわけだ」
楓 「…記事の為なら、命も賭けましょう。でもひくひく」
楠見 「ごめんね覚えてないんだよ。ははは」
椎名 「まあ、楓ちゃんこれで話もいっぱい書けるだろ」
楓 「ええ、ありがとうございます。明日の朝刊を見てくださいね」
椎名 「タダでちょうだい」
楓 「買ってください」
椎名 「取材料としてさ」
楓 「取材料は今日の手伝いでチャラということで」
椎名 「え、それは彼の…。僕のは」
楓  「あなたは、教授の家から送ってあげました。それでは今夜はごきげんよう」
KP 「ははは、去っていってしまった」

楠見 「いい友人を持って幸せですね清四朗君」
椎名 「あーゆートコがなけりゃ、いい奴なんだけどね」
楠見 「なかなか働き者でいい娘だと思うよ」
椎名 「楓ちゃんも、しんたぐらい心が広ければなあ」
楠見 「医は仁術って言いますからね。このくらい心が広くないとやっていけないんだよ」
KP 「…。」

椎名 「三吉さんは送って帰っちゃったの?」
三吉 「あ、椎名の家に寄って荷物取ってくる」
KP 「三吉さんが椎名さんの家に行くと、戸口のところに知らない若い女の人が立っている」
三吉 「どんな人?」
KP 「割合奇麗な人ですね。APPは大体13ぐらい」
三吉 「えーと、椎名にご用ですか」
KP 「はい、そうですけど。あなたさまは」
三吉 「椎名の友人です」
KP 「『まあ、そうですか。私父の実家の方に行っておりまして、これを差し上げようと思って持ってきたのですけど』風呂敷に包まれているのは、何やらごろごろした物ですね」
三吉 「ああ、それはどうも。なんですかそれは」
KP 「みかんです」
三吉 「あ、本人は今ここにはいないので、渡しておきます」
KP 「ご旅行にでも行っていらしゃるんですか」
三吉 「ちょっと…、怪我をして入院しているんです」
KP 「まあ、この間お会いしたときは元気そうでしたのに」
三吉 「うん、まあ、突然するのが怪我だよね」
KP 「…それもそうですわね。それでは有原が、こちらのみかんお届けしたとお伝えください」
三吉 「有原、ですね。はい、わかりました」
楠見 「聞いてないから、何の疑問も持たないよね」
KP 「それでは、よろしくお願いします」
三吉 「わざわざどうも」
KP 「三吉さん、目星振ってください」
三吉 「22、OK」
KP 「どこかから帰ってきた、という感じですね。大きな荷物を抱えているといった。去って行った先は…、世田谷です」
楠見 「…伏線だな」

この後鍵の掛かっていない清四朗君の部屋から、荷物を取り出す三吉さん。そして楠見診療所では…

椎名「涙流しながらご飯食べてる。いやあ、こんな立派な食事久し振りだ」楠見「一応塩魚もあるからね」椎名「こんな大きいの食べていいのか」
楠見「…ちゃんと噛んで食べるように」
椎名 「あ、三吉さん、持ってきてくれたのかい」
三吉 「うん、こっちが道具と着替え。こっちがみかん」
椎名 「?。君の差し入れかい」
三吉 「俺な訳ないだろ。そんな金ないよ」
椎名 「じゃ、誰から」
三吉 「おまえの家に行ったら、家の前に女の人が立っていて、おまえに渡してくれって」
椎名 「なにかな」
三吉 「有原って言ってたな」
楠見 「ぴきーん」
椎名 「有原---?もしかして、かずこさんかな」
三吉 「若い女の人だったぞ」
椎名 「うちに来る有原っていったら、かずこさんしかいないけどさ。彼女どこかに行ってたのかな」
三吉 「旅行の帰りみたいだったけどな」
楠見 「それなら家にいなかくても、しょうがありませんね」
椎名 「あ、このまま家に帰っちゃったら…」
楠見 「それはまずいですね。しょうがない、有原さんの家に向かいましょうか」
椎名 「うん、ってこの体で行こうとする」
楠見 「安静にしてて欲しいんだけどな。自分がどういう状態か分かっています?」
椎名 「だってしんたが、突然行ったって怪しくないか」
楠見 「僕はそんなに怪しいかい」
椎名 「いきなり来た知らない人が、僕は怪我をしていて、お父さんは死にましたって言うのかい」
楠見 「それは、そうだね。しょうがないから行こうか」
椎名 「じゃ、頼むよって、自転車の後ろに乗ってる。あ、三吉さんはどうするんだい」
三吉 「仕事があるから帰るわ」
椎名 「じゃあとりあえず、出来た分だけ渡しておくヨ」
三吉 「あぁ、すまんな。あとな、鍵はかけておいたほうがいいぞ」
椎名 「ははは、鍵どこいったかわかんないんだよな」
三吉 「それじゃまた明日来るから」

楠見 「清四朗君、この自転車は、君を乗せて耐えられるほど、強くないよ」
椎名 「じゃあ、どうやって行くんだい」
楠見 「君にも僕にも、二本の足があるからね。さあ行くよ」

KP 「有原宅につきました」
椎名 「明かりはついてるかな」
KP 「うん。ついてる」
椎名 「がんがんがん」
KP 「はい、どちら様ですか」
椎名 「あ、椎名です」
かずこ 「まあ椎名さん。みかん受け取っていただけました」
椎名 「あ、どうもごちそうさまでした。いったい何処へ行ってたんですか?みかんと言うからには和歌山ですか」
楠見 「愛媛というものありますよ」
かずこ 「横浜の方なら汽車も出ていますから、あちらの方まで行ってきたんですよ」
椎名 「え、横浜ってみかん採れるんですか」
かずこ 「あまり有名ではありませんけど。あちらの方に父の実家がありましたものですから」
楠見 「言わなくていいのか、という顔でそっちを見ている」
椎名 「多分、どうしようって顔で見てると思う」
楠見 「僕に聞かないでください、って目で見返す」
かずこ「それより上がっていらっしゃいませんか。父はまだ帰ってきていないようですけど」
椎名 「あの、ちょっと事情がありまして…」
かずこ「そう言えば、怪我をなさったとか。そのことですか」
椎名 「大丈夫ですよ、こんなの」
楠見 「足、げしょ。早く言いなさい」
椎名 「いやあ、実はお話しが…。ずばっと言っちゃって、いいのかな」
楠見 「いや、あの、大変申し訳にくい事なんですが」
椎名 「教授が警察の人に連れていかれたんですよ」
楠見 「ちがーうっっ」
かずこ 「う、うちの父がいったいどのようなことで」
楠見 「ちょ、ちょっと待って下さい。違うんです。貴方のお父様が誠に不幸なことなんですが、心臓マヒで亡くなられたのですよ」
KP 「口元に手を当ててうつむいているね」
楠見 「いやな役…」
椎名 「すまん」
かずこ 「それで父は…。部屋には鍵がかかってたんですけど」
椎名 「警察がかけていったのかな」
楠見 「駐在の人が来たので、多分遺体はそちらの方に」
かずこ 「そうですか」
楠見 「そちらの方に向かったほうが、よろしいのではないでしょうか。なんでしたら付き添いを」
かずこ 「とりあえず中に入っていただけますか。もう少し詳しくお聞きしたいのですが」
楠見 「…では、おじゃまします」

KP 「奥の方に行くところで、目星チェック」
楠見 「16だから、成功」
椎名 「成功だよーん」
KP 「そしたら、食事の用意が一人分だと思った」

楠見 「おや、夕げの用意をなさったんですか。お父様は帰ってこないと?」
KP 「え?いいえ、でも外で食事を取るのかと思ったものですから」
楠見 「あせってる?」
KP 「心理学ある?」
楠見 「あるよ、当然」
椎名 「その前にかずこさんの性格考えて、教授の分用意しないなんてあるのかな」
KP 「前もって言われていれば、用意しないことは十分あるだろうね」
椎名 「今まででかけていてわかんないから、用意しとくんじゃないかな」
楠見 「用意してそうだよね。…15。わかるよ」
KP 「椎名さんも振ってみて」
椎名 「出れば二人いっぺんに分かる、と。…わかんないな」
KP 「そんなことしないないんじゃないかな、くらい」
楠見 「とりあえず気にはなる」
KP 「とりあえず居間の方へ。『それで、あの、どのような状態だったのですか」
楠見 「気になるんで、逐一見てます」
椎名 「僕は話す」



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>>目次

【混沌の血脈】第1話「輝ける暗黒の書」4

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Ep.4 診療所は戦場のごとく

楠見 「気になるんで、逐一見てます」
椎名 「僕は話す」



KP 「 そしたらね椎名さんが情況を説明してくと、手紙が来たってところでは、うんうんとうなずいている。死体を発見したというところで、眉を一瞬上げて、でうつむいて目で先をうながす。あと椎名さんが電気を触っちゃったってところで、ふっと目を大きく見開いたね」
楠見 「 それは驚き?」
KP 「 驚きだね。心理学振って出たら、もう少し詳しく…。驚きだね」
楠見 「 お、驚いている。そりゃそうだよな。ははは」
KP 「 驚いた後で手に目をやって『そんなことがあったんですか』」
楠見 「 妙に落ち着いてますね。てっきり泣き崩れるかと」
椎名 「 かずこさんは気丈だから」
かずこ 「肉親の死というものは、なかなかすぐに把握できるものではありませんもの」
椎名 「実際に見てないしね」
かずこ 「私か出るときはあんなに元気そうだったのに」
椎名 「 何日位旅行に行ってたんですか」
かずこ 「昨日の朝発ちまして、向こうで一泊して、つい先程帰ってきました」
楠見 「 ふうん」
椎名 「楽しかったですか」
楠見 「こんなときにっっ」
かずこ 「用事があると言って残った父を、無理にでも引っ張っていくべきでしたわ」
椎名 「 そう言えば、最近教授が急いでやってることなんてありました?」
かずこ 「…先日行った中東での調査の資料などを、整理しているようでしたけど」
椎名 「 なんか言いたいことでもあったのかな」
楠見 「 そうだねえ、なにか清四朗君を呼ぶようなことがあったのかな」
椎名 「 うん、結構字が急いでたんだよね。でも急ぐものを手紙で出すかな」

(楓  「歩いてみかん持っていく娘に、行かせりゃいいのに」)

椎名 「その資料の中で変わったものでも見付けて、僕に見せようとしたのかな」
かずこ 「さあ」
椎名 「手紙っていうことは、その場を離れられないほどに凄いものだったのかな。教授はなにか言ってませんでしたか?」
かずこ 「椎名さんをお呼びするようなものはなにも」

楠見 「 うーん、なぞだあ。しかし何故こんなにおちついてるんだ、この女。と、内心おもっている」
椎名 「 そりゃ思うんだろうね」
楠見 「 医者だから、身内が死ぬ場面て結構見てるじゃない。それらのパターンに当てはまらないから、ふに落ちないものはある」

かずこ 「一通り伺ったようなので、警察の方に行こうと思うのですが」
楠見 「 はあ。引き留めてしまってすみませんでした」
かずこ 「いいえ。こちらの方こそ引き留めてしまって申し訳ありませんでした」
楠見 「 では、お気を強く持って」
かずこ 「有り難うございました」
椎名 「 気をしっかり持ってくださいね。じゃあ」


楠見 「 …いやあ、清四朗君。どうも落ち着いてると思わないか」
椎名 「 うん、落ち着きすぎとは思ったけど」
楠見 「 いろいろ気になることはあったねえ」
椎名 「 とりあえず、気になる、だけで帰るんだろうな」
楠見 「 あ、君一応安静なんだから早く帰りましょう」
椎名 「 じゃあ、走って帰りましょうか」
楠見 「 そんなに死に急ぎたいですか」
椎名 「 ……」
楠見 「 寄り道しないという意味であって、走れと言うことじゃありませんからね。僕が言いたいのは」
椎名 「 すまん」
楠見 「 三吉さん帰っちゃったねえ。夕げのごちそうしようと思っていたのに」
椎名 「 三吉さんにも悪いことしたな。あした謝っておこう」
楠見 「 なかなかいい人だね」
椎名 「 うん、僕の友達だからね。とりあえず安静って言うからには今晩はもう寝るよ。」
   


KP 「 で、翌日の朝なんだけど」
楠見 「 たんたんたんたん」
楓  「 新聞にはミステリータッチの記事が載っている」
KP 「 …東亜新聞とってる?」
楠見 「 うん」

楓  『 ----大学教授謎の怪死。密室の中で彼は何故…』

楠見 「なんか色物くさい記事ですね」
椎名 「あいつなんかウソ書いてないかなぁ」
柊  「家でその記事を読みながら『まあ椎名さんの家の近くですわね。世田谷っていったら』なんて言ってる」

楓  『----一人娘はいったい何処に消えたのか』

楠見 「……。清四朗君、卵焼きは残さないでくださいね。死因なんかは言及してあるの?」
KP 「 うん」
楠見 「どこまで話したのかな」
椎名 「 聞かれたことは…、でも詳しくは話してないはずなんだけどな」

楓  『 ----確かなスジからの情報によると、感電による心臓マヒが直接の死因らしいが…』

椎名 「 ----……」
楠見 「 ----確かなスジって何だろうね。これってさ、『新聞』じゃないよ」
椎名 「 週間誌じゃないの、これ」
楓  「 本当は書かれているんだけど、ウソくさいと」
椎名 「 駐在さんにお怒られなきゃいいけどナ」
楠見 「 怒られるのは僕たちじゃないかな」
椎名 「 僕詳しくしゃべってないよ」
楠見 「 話したのは清四朗君だよ」
椎名 「 駐在さんも詳しくじゃなかったらいいって言ったよ。第一楓ちゃんもしゃべってないよ」
楠見 「 はははは」

楓  「 あ、この時点では娘さんが帰ってきたこと知らないから、謎の失そうになっている」
椎名 「 かずこさんが読んだらどう思うんだろう」
楠見 「 これ凄く彼女に迷惑がかかるんじゃないかな」
椎名 「 ちょっといなくてさあ、くらいしか言ってないよ」
楠見 「 ----あやしい新聞だなあ」
椎名 「 あ、9時くらいに、さくやさんが来るんだろうなあ」
   


柊  「 8時くらいかも。知らない人の家に行くものだから、びくびくしている。『いつまでもこのままじゃいけないわ。早くこの対人恐怖症を治すなきゃ』」
椎名 「 でもなるべく下を見ながら歩いてるんでしょ」
柊  「 そうそう」
楠見 「 ここは朝8時ごろから診療開始かな」
柊  「 その頃には戸口に立っているんだろうな。とんとん『あのぅ』」
楠見 「 聞こえてないよ、多分。うわぁっ、おじーちゃん。どーしてこんなことしたんですかっっ」
KP 「 じゃあ、清四朗君、目星」
椎名 「 僕?…頼む、気付いてくれっっ」
楠見 「 僕もふろう。----」
椎名 「 ふ…、愛が勝った。ちなみにひなたぼっこも振っていい?45、成功」
三吉 「 ひなたぼっこ成功って何だよそれ」
椎名 「 だから、心地よくひなたぼっこをしてるんだよ」
KP 「 そうすると、正面の方から『すみませーん』て声が聞こえてくる」
椎名 「 はっ。だだだだだだだっっ」
柊  「 多分戸口で困ったような顔をして立っている」
椎名 「 裏から正面玄関へ。『さ、さ、さ、さくやさんっ、こ、こちらですっ」
柊  「 はい、おじゃまします」
椎名 「 いそいそと茶を入れる。けど舞い上がってるから」
 
----想像はつくけどね。
     
柊  「 あ、お構いなく」
KP 「 …構ってほしくないかも」
楠見 「 その間もこっちは戦場。うわぁっ、おじーちゃんっ」
柊  「 あのぅ、忙しそうですね」
椎名 「 ピシャッ」
楠見 「 ひ…ひどい」
椎名 「 か…彼は、その、しょ、しょうがなくて、あの、あああ僕はいったい何を言っているんだあっ」
柊  「 多分それが彼の仕事だって言いたいんだろうと思っておく」
椎名 「 でもって、そのまましーん」
KP 「 三吉さんは、いつごろ来ますか」
三吉 「 んー、俺は昼過ぎかな」
柊  「 あの…お仕事のほうは…」
椎名 「 はいっ」
楠見 「 何かするんだったら奥の部屋使ってくださいね」
   


楓  「 わざわざ正面玄関から『今日は新聞読みました?」
楠見 「 あ、裏から入ってね」
楓  「 いやだわ先生、そんなに邪険になさっては。新聞読みました?」
楠見 「 これちょっと持っててくれるかな」
楓  「 は、はいっ」
楠見 「 ちょっとその子抱いててね」
楓  「 大丈夫だよー、いたくないからね」
楠見 「 以下省略」
KP 「 そして昨日の戦いが、また繰り返される」
椎名 「 ぎこちない動作で、これ、原稿用紙。これ、鉛筆です。これ、消しゴムです」
柊  「 はい」
椎名 「 ----あ…、そう言えば、この前のところの原稿、渡しちゃったんだ。…前半部分を考える」
楠見 「 左手で書いたのを清書してもらった方が、早かったのでは」
椎名 「 …いい天気ですねえ」
柊  「 はい、『いい天気ですね。』」
椎名 「 いやあ、ひ、ひなたぼっこ日和ですね」
柊  「 『日なたぼっこびよりですね』…かぎかっこかなぁ」

----結局三吉さんが来るまで、この状態のまま。まったく…。

椎名 「 なんか一気にボッていきそう。頭から煙り出てるの」
柊  「 なんでこの人気がつかないんだろう。心理学85持ってるのに」
KP 「 自分のことがわからないっていうのが、残りの15なんだよ」
柊  「 なるほど。人のことだけか」

----…君、前作引きずってるだろ

三吉 「 昼過ぎたら行くよ」
楠見 「 昼になったら『あ、いらしてたんですか。来たんだったら言ってくれればいいのに、みずくさいな』」
楓  「 しっかり玄関からごあいさつしました」
楠見 「 ああ、裏から入ってこないと駄目ですよ。まあよかったらご飯食べてゆくかい?」
楓  「 もちろんです」
楠見 「 …遠慮のない人だなあ。こっちだよ」
楓  「 あら、椎名さん新しい仕事ですか?ぴらり、『いい天気ですね』『日なたぼっこびよりですね』…これが出だしですか」
楠見 「 作風、変わったんじゃないかい。清四朗君」
   

「じゃ、行きます。ウラから」
楠見 「ああいらっしゃい。あなたも一緒に食べますか」
三吉 「ああ、メシまだだったんですよ」
椎名 「さ、さくやさんも、どうぞ」
楠見 「たいした物はないんですけどね。男の一人暮らしは」
柊  「強張ったほほえみを浮かべて『はい…』」
三吉 「あ、これさし入れね、それと原稿」
椎名 「----相変わらずすごいな、おまえの絵はさ」
三吉 「うーん、でも金ないんだよな」
楠見 「…こっちも、何故か入ってこないんですよね」
椎名 「ひぃーって目をそらすんだろうね」
柊  「そういえばお見舞い持ってきたんですけど」
椎名 「えっ、いーんですか?そんなに気を使わなくても、たいした怪我じゃないのに」
楠見 「たいしたことなのいなら、書けばいいのに…。あ、デザートはあのみかんでもいただきましょうか」
椎名 「ど、どうぞ」
柊  「あ、ありがとうございます」
楠見 「そういえば、有原教授の件はどうなったのかな、新聞社の方には何かありましたか?」
楓  「これといって。あ、娘さん帰ってきているそうです」
楠見 「『謎のしっそー』か」
椎名 「楓ちゃん、僕あんなこと言ってないよ」
楠見 「僕も言ってない」
楓  「でも昨日からいないって…」
楠見 「それは『しっそう』ではなくて『留守』」
楓  「言葉のあやですわ」
楠見 「…僕は今まで、記者の仕事を誤解していたような気がするよ」
楓  「記者----それはとても高尚な仕事ですわ」
椎名 「…とりあえず、駐在さんから電気の事聞くのが一番じゃないかな」
楠見 「そうだね僕は専門じゃないからね」
柊  「一人だけ話がみえない」
椎名 「そのことに気付くかな」
KP 「うーん、心理学」
椎名 「35…、愛、愛だ…っ。とうっ」


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