猫屋敷+

TRPGサークル グループねこぢゃらしの活動記録

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

小話:変り種【イチゾロ戦隊ゾロッター】 …天崎李玖

何を言われたって。
なんと言われたって。
それが自分らしいから。
胸をはって。
空を見上げて。
前に進もう。


とても、とても、昔の夢を見た。
薄暗い、でも優しい土の匂いに満ちた、故郷。

「やぁい、オザックのばぁか!」
「こんなもんも作れないのかよ。お前なんもできないのなー」
「俺の弟だって、これくら持てるぞ。すげぇひ弱!女より弱いじゃん」

はやし立てる子ども達より、ずっと細くて白い手が、ぎゅっ、と握られ。
何か言いたいのに。
こんな時は何も出てこない。
悔しい、悔しい。
足がぶるぶる震えた。
怖いからじゃない。悔しいから。

「こいつ捨て子なんだろ?」
「なまっちろい、耳とんがりの取りかえっ子!草臭いからこっちくんなよな!」

腹が立つ。どろどろと熱いものがあがってくるような。
ああ。
なのに、どうして、自分は何も言えず、そこにたっているんだろう。
そんな。
昔の夢を、見た。


「…寝覚め、悪いのう…」
なんだか、血の味がしたような気がした。


わいわいと廊下で声がする。
早起きな連中はもう、起き出しているのだろう。
中庭に面した窓から外をのぞくと、レッドが剣の素振りをしていた。姿は見えないが、元気に朝の歌が聞こえてくるので、レオも起きているのだろう。
「ふむ…」
…あの、いじめられていた子どもの横にレッドがいたら、どうだったんだろう?

『お前達!ひどいまねはやめろ!俺が承知しないぞ!』

「…問答無用に突撃、じゃな」
当の本人だったとしても…やはり、突撃、なような気がした。

「レオとかパピヨンだと…」

『…ふん』
『けっ』

「一言で終わりそうじゃのう」
思わず、笑みがこぼれる。

「アクリィは…」
影で行われそうな報復の数々を思い浮かべ、思わずマイリー神に印を切る。
「考えるだけで怖い…」

身支度を調えながら、そんなことを考えていく。
仕上げに、と、バイキングキャップをかぶりかけ、手がとまった。

「ワシは…本当はどう、言いたかったんじゃろうなぁ…?」

手入れは行き届いているが、かなりの年月が刻みこまれたバイキングキャップ。
しっかりとした、重み。

「こういうことじゃろ?」

バイキングキャップをしっかりかぶると、鏡に向かって、にい、と笑ってみる。
鏡で笑っている、金髪のハーフエルフ。
「これが、ワシじゃ」

…寡黙なのがドワーフの身上。
言いたいことがあったとしても、多分言わなかっただろうから。
貫き続けた年月の重みが、全てを語るのなら。小さな自分は語る言葉を探すべきでなく。ただ、進むべきだったから。

「みんなと違う?それが何だと?お前が一族の誇りを持って、神の教えの通りに生きているなら、それは恥じるべきではないわ!」
いつも堂々としていた父。

「オザックは私たちの大事な息子だもの。私たちの誇りだよ。大好き」
いつも変わらず優しかった母。

旅立ちの時、別れを惜しんでくれた、友も、いた。

恥じるべきは。
周りと違うと、嘆いて動かない自分。
いつだって、立ちふさがるのは、自分。

「まずは自分との闘いということですね、マイリーよ」
ぺちん。
頬を軽くたたく。
おかしな夢でぼんやりしていた頭がすっきりしていくような。


胸を張って。
今日も元気に歩いていこう。


「さて、今日もうまいカレーを作るぞうっ!」

イエローゾロは今日も元気だ。



オザさん、ちょっとメランコリックになる、の巻。彼の視点から、の子どもゾロ、ですので、多分実際は違うと思います。
パピさんとか小さい頃はいじめられっ子属性なような気がするんで。ドワーフの子どもって「じゃ」って言うイメージがなかったので普通の言葉しゃべってます。




作:天崎李玖


目次へ

スポンサーサイト

小話:ドナドナ 【イチゾロ戦隊ゾロッター】 …天崎李玖



ある晴れた、昼下がり。
市場に続く道。
道ばたで、『それ』と目があった。

カナシイヒトミデ、ミテイルヨ…



「ふんふんふ~ん」
この炎天下。
全身黒ずくめの男はことのほか、ご機嫌だった。
今日も、いい天気だなぁ。




K亭の庭。
とてつもなく大きなたらいが芝生におかれ。
水を満たしたそれにはアヒルやらなにやらがぷかぷかと浮いていた。
泳げる程の大きさではないが、縁につかまったアクリィが軽くバタ足をするくらいは広かった。

「あっっっついよぉ!」
ばしゃばしゃ。
水滴が刺さるような光をはじいてところどころで虹を作った。

「まあ暑いが…だからこうやって涼んでるんだろうが」
涼しそうな顔をしているレオだったが、膝から下はしっかりたらいの中だったりする。

「レオも入れば?」
「水が半分になりそうだから、いい」
「確かにね」

くすくすと笑いながら、すぐそばで、串に刺した肉やら野菜やらを汗だくで焼いているハーフエルフに目をやる。
「…やっぱり、あれ、暑苦しくない?」
「…とかいいながら、焼けたら食うんだろ?」
「ぴんぽ~んっ!」
「しかし、本当にオザック暑くないのか?」
「うん?」
バイキングキャップからねじりはちまきにマイナーチェンジしたオザックが、さわやかに…そう、なんだか嫌になるくらいさわやかな笑顔で答える。
「何を言う!猛暑のバーベキュー!!これこそ醍醐味じゃっっっ!!光る汗!それが最高のスパイス!」
「…よくわからんが、本当にスパイスにするなよ。食えなくなるから」
「任せておけぃ!料理も闘いじゃ!」
「…オザック、暑さでやられちゃったんじゃ…」
小さなじょうろでレオに頭から水をかけられながら、眉をしかめるアクリィだった。

「おーい!3人とも~」
レッドとユーリがなにやら抱えて現れた。

「暑いだろ?メイドさんたち特製のかき氷と…」
「Kさんがくれたスイカでーすっ。よく冷えてますよっ!」
「やったぁ!レッド、あたしイチゴ味っ」
「私は抹茶がいいな」
「ワシ、カレー」
「「「あるかっっっ!!!」」」
「冗談じゃ。メロン味くれ」
「「「……。」」」


夏、である。

真っ白で大きな雲。
抜けるような青空。洗い立てのシーツを広げたような。

「んー、ごちそうさまっ」
「アクリィ、スイカ切ろうか?」
「食べる食べる~!」
「ちんちくりん、舌、真っ赤だぞ」
「はうっ」
「ワシの舌も緑じゃ」
「私の舌はふかみどり」
「レオさん、一番不気味です」
「ミステリアス、と言ってくれ。…ところでパピヨンは?」
「そういえば、見かけないなぁ?パピヨンの分のスイカ、とっておいた方がいいよな?」
「冷えてるうちに戻ってこないですかね…ってパピヨンさん!」

声をききつけたか、裏門から庭へとやってくる黒い影。
なにやら大きな箱のようなものをもっていた。

「よう!なにやってんだ、お前ら?」
「なんというか、今日は出動もないし、涼んでるよ。パピヨンはどうたんだ?」
「うん?や、暑いからさ。ちょいと涼しいモンでもないか、市場の方、ひやかしてた」
「スイカ食うか?」
「おう。…と」

大きな箱を、さほど重そうでもなく傍らに置き、スイカに手を伸ばす。

「パピヨン、それなぁに?」

ふふん。
スイカの種を頬につけ、パピヨンが不敵な笑みを浮かべた。

「市場で買ったんだ。すっげぇぞ」
「…なんですか?」

のぞき込んだユーリの顔が。

「ぱぴよんさん…」

真夏にふさわしくなく。

凍り付いた。

「どうした、ユーリ…!?…こ、これはっっ!!」
「レオどしたの…あっっ!!」
「アクリィ?…うっ?!」
そして、串から手を離したオザックが。
「なんじゃこりゃああああああああああああ!!」

もきゅ。

もこ。


「「「「グリズリー…?!」」」」


生まれて間もないくらいだろうか。
人間の赤ん坊くらいの大きさの、もっさりとした小熊が。

4匹。

しかも。

「ピンク、黄色、青…こ、これ…」
呆然とつぶやくアクリィの声を塗りつぶすような、さわやかなパピヨンの笑顔。

「すげぇだろ?!俺もこんな色のグリズリー、初めて見た。新種だな!」

「いや、それは色を…」
レオの声は迫力に負け、尻つぼみになって消えていく。

「それ、市場で買ったのかい?」
心なしかレッドの笑みがひきつっていた。

もきゅもきゅ。

パピヨンの手にかわいらしくじゃれるグリズリー。
彼の手から血がふいている様な気がするのは…多分気のせいだろう。

「ははははっ。かわいい奴らだなぁ。じゃれるなよ」

多分、気のせいだろう。

「ピンクの奴が特にやんちゃでさぁ。がぶがぶ噛んできやがるんだ。すげぇ、かわいいよな」
「……」
「それ、どうするんじゃ?」
「飼って増やすにきまってるだろ?頑張ってねぎったんだ。…これはほりだしものだな」
「増やすのか…」
「増やすのね…」
「増やすんですか…」

気まぐれな夏の白雲。
心なしかかげってきたような。

「大丈夫だって、お前らにも利益はまわすからよ」
「…そんな心配はしていない」

ぼそ。
「ってか、だまされてるわよ。レッド、教えてあげなさいよ」
「…ごめん。俺にはっっ、そんな勇気はない…っ」
ぼそぼそ。
「レオ、あなた友達でしょう?!」
「ちんちくりん…そんな残酷な事を私に言えというのか…?!」
「ああっ、パピヨンさんっ、だまされてます~。屋台のひよこよりタチ悪いです~」
「しかし、何で市場でグリズリー売っとったんじゃろうのう…」
「売ってても普通かわんだろ…あ、オザック、そのタマネギとトウモロコシの串くれ」
「あたし、お肉」
「二人とも現実逃避かい…俺も、ニンジンのやつ…」
レッドが悪魔(?)魂をうったその時。
空はますますかげりをみせて。

上機嫌にカラフルグリズリーと戯れるパピヨン。
黙々とバーベキュー串を手にする5人。

そして。


ぽつ。
ぽつん。
ぽつん、ぽつん、ぽつん。

「あ、雨…」
伸ばしたアクリィの手のひらに、ぽつぽつとまばらに、すぐにリズミカルに粒が落ちてくる。

「おっ。これで少しは涼しくなるなっ」

串を元に戻したレオが憂鬱につぶやいた。
「パピヨン…それ」
「うん?どうした?…?」

もきゅもきゅ。
グリズリー達は久しぶりの雨を喜ぶかのように、無邪気に手を動かす。
ほほえましく眺めていた、パピヨンの顔に疑問の色が浮かんだ。
「うん?…なんだか…」
草むらに水たまり。
雨の中、誰も屋敷に入らず、何とも言えない笑みを凍り付かせたまま、それを見守った。

沢山の水たまり。
その中に。
桃色。
黄色。
青。
色とりどりの水たまり。

レッドはきつく唇をかみしめた。
リーダーとは因果な役割だ。
他人が言いにくい事でも、あえて言わなくてはいけないときもある。
ああ、ファリス。
これが俺にかされた試練なのですか?!←多分違うから。

「パピヨン…」
「レッド!!」
「いいんだ、アクリィ。俺が…言うさ」
ふっ。と。
レッドの笑みを映すアクリィの瞳が涙に揺れた。
「レッド、ひどいっ。ひどすぎるわっ!!あたし、もう、耐えられないっ」
「レッドさん…」
「レッド、お前が言うくらいなら、私がっ!」
「大丈夫だ、レオ。これは俺の仕事だよ」
「…ワシでは…何もしてやれんからのう…」
「パピヨン…」
「レッド?」
「パピヨン…それは…それは…っっ」

ばしゃっ。
レッドの拳が血がにじむほど、握りしめられ。
絞り出すように、言った。

「それは…ただの、グリズリーだっっ…」
「なっ…」

もぎゅもぎゅ。
あどけないグリズリー達は雨に洗われ、その真の姿をあらわにする。

パピヨンの体が力なく、崩れ落ちる。
「それじゃ…俺は…」

「…だまされたんだろ。市場の親父に」

レオさん、身も蓋もありません。

「それ、どうするの?パピヨン、自分でなんとかしてね?」
「ワシでは…何もしてやれんからのう…」
それしか言えないのか、あんたは。
「パピヨンさん…。考え浅すぎます…っ」
ユーリの一言がずん、と背中にのしかかる。
そして。
「パピヨン…頑張れよ…」
レッドの友情スマイルが、パピヨンの目には痛かった。






そのご。

どごおおおおおっ。
「いてぇっっっ?!お前らっ、うりさばくぞっっ!!」
どがああああああっっ。
「うごごおおおおおおおおおおっっ」

「あれ、懐いてるのかなぁ?」
「うん。しつけはできてるみたいだよ。トイレもご飯も完璧らしい」
「まあ、あれだな。人を襲ってはいけないということは学習できないみたいだな」
「それが一番まずいんじゃないかのう…」
「僕、パピヨンさんの部屋で眠れません…」


グリズリー達が森に帰る頃にはパピヨンのファイターレベルがあがったとか、あがらないとか。




ネ…ネタモノです…。いや、グ●ーミー好きなんですよ。
ギャグ苦手なんです。本当、申し訳ない…



作:天崎李玖


目次

小話:おもいだせない【イチゾロ戦隊ゾロッター】 …天崎李玖

!! Caution !!
※本編6話終了後・ネタバレを含みます※



「飽きちゃったとはいえ…」

香辛料を片づけるのを手伝いながら、アクリィがぼそり、とつぶやいた。

「こうやって夜営しながらだと…カレー食べるの、楽しいのよねぇ」

にっこりと笑ったオザックが、手際よく余った材料を片づけていく。
「カレーは人を幸せにするんじゃよ」
「んー。それってオザックがそう思って作るからだろ?」
「パピヨン?」
「オザックが、『カレーを食べれば幸せになる』と思ってカレーを作る。俺たちが幸せに
なればいいなと思ってつくるわけだ」
「ああ、そっか!作り手が幸せにしたいって思って作るんだもん、美味しいよね。…ってか
パピヨン、結構ロマンチストね」
「いや、そういうんじゃねーよ。ただ、今考えてたコトと内容がかぶったからさー」

からん。

整えた薪を無造作に火にくべる。
ゆらゆらと赤い炎に巻き込まれていく様を見つめる瞳は、ひどく憂鬱そうだった。

「……」
レッドが、肩越しにカップを渡す。ふわり、と香草の香りが立ち上る。
「ありがとよ」
「何考えてたんだい?」
「夕飯準備中、ずうっと聞こえてた、あの空元気な歌声」
「ああ…あれ、ね」
横に腰掛けたアクリィがため息をついた。
「正直、パピヨンみたいにわかりやすく落ち込んでくれると助かるんだけどね」
「…わかりやすくて悪かったな」
「いや、ほめてるんじゃないかの? ワシ、今のレオじゃ、何言っていいのか困る」
「そうなのよね。ある意味、わかりやすく落ち込んでくれるのも、気遣いの一つの様な気がしてきたわよ。あそこまでくると」
げそっ、と長い耳がたれる。

「つまり。気が回せないくらい落ち込んでるってことか」
「なにせ『いのち』だしねぇ」

ぱちぱちと薪がはぜる。

「そうじゃ、パピヨン」
「あ?」
「なんで、カレーとレオの歌がかぶるんじゃ?」
「ああ…。作り手の思いがこもってる、ってこと」
「??」
「アクリィ、わかるか?」

私にわからないわけないよ。
いたずらっ子の眼差しが、そう、笑った。

「曲調は楽しそうなのに、なんかあの歌きいてると気が滅入らない?どんなに元気に振る舞っても、歌は正直なのよ」
「心がこもってるから?」
「…すごいな、レッド」
「ずいぶん、成長したのう」
「人が鈍感、みたいな言い方、やめてくれないかな?」

その時。
みんなが頭に浮かべた台詞は、多分、同じ。





炎から離れて。
湖の岸には妙にぴかぴかに磨かれた食器が積まれていく。

はぁ。

ため息で曇った部分をまた、磨く。
ゆっくりと洗っても、これで最後だった。

「なんか、疲れた…」

ついでに顔も洗ってみる。
ずいぶん泣いたせいで、腫れたまぶたに、冷たい水が心地よい。

どれだけぼんやりしていたのか。
後ろに現れた人影に気づかず。

「だぁれだっ!」

ぽん。

やや前屈みだった体勢は思いの外不安定だったらしく、そのまま、湖へ。

「うわぁぁぁぁっっ」
「レ、レオさんっ?!」

ばしゃん。

勢いよく、つっこんだのだった。


「う、嘘?そんなに力入れてないですよ?」
「げほ…っ、レイア、脅かさないでくれ…おぼれるかと思った」
「…こんな浅いところでおぼれたりしませんよ」
「知らないのか?エール一杯分で人は溺れるんだぞ?」
「四つんばいですごんでも、だめですよ。…ずぶぬれになっちゃいましたね」
「誰のせいだ、誰の」
「ほら、水の滴るいい男って言うじゃない?かっこいいですよ」
屈託なく笑いながら、右手を差し出す。
その手を取りながら、ビーチバレーの件と言い、実はすごい怪力なのではなかろうか、と考えるレオだった。


「それ、脱いだ方がいいんじゃないかしら?濡れた服を着ているとかえって風邪をひくみたいですよ?」
「確かに…って…」

襟にかかった手がとまる。

「どうしました?」
「男の着替えをのぞくのが、趣味だとはしらなかったな」
「ええと…別に趣味ではないですが、見ていちゃだめかしら?」

別におもしろいものではないから、と呟いた横顔が月明かりの下でも随分赤かったので。
レイアは笑いをこらえるのに苦労する。

でも、レオさん。それは食器を拭いていた布なのですが…。

「あら?」
「は?」
「あんなに巨大なハープ、背負ってるからてっきり…」

きょとん、と瞬いた藍色の瞳が自嘲気味に細められた。

「私は貧弱な魔術師だからね。大体、あれが見た目通りの重さだったらパピヨンでも持てないと思うよ?」
「そ、それはそうかも…でも、とても大きかったですよね?」

それに、歩く度にずしん、ずしん、とかいっていたような。

おおかたの水気を拭き取った手が、困った、といった風に前髪をかきあげる。
「説明が難しいようなお話?」
「その通り。6年前、友人達から選別にもらったんだ。…その友人達っていうのが当時の私と一緒で駆け出しの魔術師だったんでね。…いろいろと」
「いろいろと、ね」
「いろいろと、だ…で、いつまでこっち、見てるかな?」
「…あらあら、見とれちゃいました…赤いですよ?」
「……ぬれた服があるから、食器を半分、もっていただけるかな、悪趣味なお嬢さん?」
普段からは想像もつかない、おおざっぱな身のこなしでたき火の方に歩いていく背中を見ながら、レイアはくすり、と笑みをもらした。

「悪趣味かしら?」
「悪趣味だね」
「細い方だけど、綺麗なんだもの。見たっていいじゃないですか」

どんがらがっしゃん。

腕から落ちた鍋達が盛大な音を立てた。


ぱちぱち。

薪が静かに赤い炎を揺らす。
レッドが剣の手入れをし、その膝によりかかり、アクリィが眠っている。
オザックは材料の仕込みなのかごりごりと乾燥した草をつぶしていたし、パピヨンは炎を明かりに本を読んでいた。

レイアは先ほどから黙ったままの吟遊詩人の横顔を見ていた。
レッドのマントを巻き付けて、両手でカップを持っている様子が思ったより子どもっぽくて、何となく目が離せなかったから。
ふい、と目があった。
困ったように数回瞬き、また炎を映す。
意外と照れ屋なのかもしれない。

「あの…」
「うん?」
「やっぱり、お友達の思い出ですし、大切なものだったんですよね?」

ぴく。

レオより他のメンバーの顔があがる方が先だった。

…ずいぶん直球だなぁ。
パピヨンが本の間から片目だけのぞかせる。


「どうかな」


意外な返事に、オザックの手が止まる。

「確かに…手元からなくなった、と思ったら泣けるくらい、大切だったのかもしれないんだが…」

ぎゅっ、とカップを持つ手に力がこもる。

「大切で、大切で、ずうっと大切にしてきて…でも、多分違うんだ。大切にしてきたのは友人達の思いだったはずなのに、違うことで悲しんでいて。…それに気づいてよけいに落ち込んでいる」


変な話だ。

唇の動きだけでそう言って、笑った。


友情の証と、仕事の誇り。
一緒に持っていた、と思ったのに。

いつ、すり替わっていたのか、おもい、だせない。


「変な、話をしてしまったな。みんなにも迷惑かけてるし…今日の私は格好悪い」


そんなことはないです。

そう、今言っても、どうにもならないような気がして、レイアは自分のカップに口をつけた。


レッドの入れてくれたお茶は美味しくて。
長くなりそうな夜も、どうにかなりそうな、そんな気がした。





ヤマもオチもないですね。なんか、下手なラブシーンより、こういうの照れくさいです。
レイアさんは爆弾発言、地雷発言が似合う女性だと思います。




作:天崎李玖


→目次

小話:ある日のこと 【イチゾロ戦隊ゾロッター】 …天崎李玖

 KAMADA屋のたぬきそばを豪快にすすり上げると、パピヨンは情けないため息をついた。

「金がねぇ」

「…貴様、食べ物屋でそれはないだろう」
「いや、そば代くらいはあるんだけどさ。今、じゃぺーん亭が改修工事してるだろ?だから休み。バイト代入んねーんだよ」
「そういえば、そんなこと言ってたな。…てことは私も歌いにいけないと言うことか」
 きつねうどんのあげを飲み込み、ううん、と考え込む。
 カウンターから親父が顔をだした。
「なんでぇ、お前さん達、資金難か。…ちょうどいい」
「「あ?」」
「オザックさんの話じゃ、そこそこ剣も使えるってな話じゃねぇか。引き受けてほしい仕事があるんだが」
「やる」
 二人の声は綺麗にそろった。


 そして。

「山の中でカレーの香草探すのに、剣の腕は必要ねぇだろうになー」
「そうとも言えまい?こんな山だ。グリズリーにでも襲われたら、普通の人ならたまらない」
「グリズリーの話はやめろ」

 笹藪をかき分けるレオとパピヨンだった。

 出で立ちはいつもと変わらないが、背中には大きな革袋を下げている。

「えーっと。後は、ムラサキニオイシメジとブナトカゲ…トカゲ?!」
「干したものを煮込むといいスープがとれるらしいぞ」
「うえ。すでに植物じゃねぇよ。オザックもつれてきた方がやっぱよかったかな」
「…貰い分が減るから二人で行こうと言ったのはどこの誰だったかな?」
「うっ。それを言われると弱いな」
「しかも、オザックも誘って、と言われていたのに」
「お前だって、誘わなかったんだから、同罪だろ」
「まぁ、確かに」

 KAMADA屋の親父の依頼は、『メモに書いてあるカレーの材料を採ってくること』だった。
 自分で採りに行くにも遠出だったので、休みを取らねば、と思っていたところだったという。
 1日でじゃぺーん亭ウェイター4日分。悪くない仕事だ。

「紫っていうんだから、これじゃね?」
「それはムラサキテングダケ。噛みつかれると腫れるぞ」
「噛みつく…って…うわぁぁぁ!」
 紫に黄色い水玉が毒々しいキノコの傘が突然開き。

 きしゃああああああああああっ!!

 鋭い歯をむき出し、威嚇する。
 パピヨンは慌ててそれをたたきつけるが、足元の腐葉土でぴちぴちとキノコがはねている。
 結構グロい光景であった。

「キノコの分際できしゃぁ、とか言うんじゃねぇぇっ!!」
「なんでも触るのは危険だと書いてあるぞ」
 手帳くらいの小さな本をパピヨンの前で振ってみせる友人。
 よく見ると『決定版・グリーンマウンテン生き物ガイド第2版』と書いてある。
「用意がいいな」
「基本だ」
「んで、ムラサキなんだか、はどこにあんだ?」
「シダの中に生えてるらしいが…」
「あの辺、シダじゃね?よし、さっさと集めて、ちゃっちゃとバイト料もらってこうぜ!」

 ざざざざざざ。

 イノシシもかくや、という勢いで笹藪をかきわけていく。
「元気だなぁ」
 レオは腕を組み、思わず苦笑したのだった。



「ブナトカゲが見付からねぇな…」

 木々の隙間から差し込む光を見上げながら、パピヨンがそう言うと。
「結構高価なものらしいからな。簡単に見付かるものではないんだろう」
 本から目を離したレオがうなずいた。

「さっきからブナ林を歩いてるっつーのに…ちょっと休もーぜ」
「そうだな」

 丁度よい休憩場所を探そうと足を踏み出したパピヨンが見つけたのは。
「あれ、小屋じゃねーか?」
 焼き物の石を積み上げた小屋だった。
 入り口も小さく、質素な作りだったが、休憩に使うには十分すぎるくらいだ。
「レオも早くこいよ」
 声をかける間もなく、走り出す。

「全く、そんなに元気があるなら休憩する必要もないだろう」
 苦笑を浮かべたレオが小屋に焦点を合わせた刹那、凍り付いた。
「ちょ…待て…それは…」
「あ?どうした?」
「パピヨン、音を立てず、ゆっくり、戻ってこい」
「だからどうしたんだよ?」

 がさ。

 足元で枯れ葉が音を立てた。

 ごと。

 ブロック状の石がことことと落ちてきて、足元を囲んでいく。

「なんだなんだ?」
「馬鹿もんっ!これは人喰い石のレンガレンガだっっ!!」
「人喰いって…ええええええええええ?!」

 ごとごとごと。
 動くたび、それをふさぐように朱色の石が降ってくる。

「ゾロッター3巻コラムにも載っていただろう!!」
「キャラクターは普通読めねぇんだよっ!!」
「にしても、ちゃんと書いてるだろうっ!ここに!ばっちりとっ!」
 腕を引っ張りながら友人が指をさしたそこには。

『わたしはレンガレンガです』

「普通、山小屋に表札なんてありえねぇよっっ!しかも自己紹介!」
「レンガレンガは集団で建物に擬態するらしい。隣町の名物モンスターくらい覚えておけ」

 煙突状に組みあがった石から頭だけ出している姿はいささか間抜けだったが、隙間にもぎっしりと石が詰まっているため、動くことができない。

「なぁ、レオ。これってやっぱやべぇの?」
「人喰い石っていわれてるくらいだから、人を喰うんだろうな」
「…どうやって?」
「いや…よくは知らんが、ゆっくり溶かして喰うそうだ」
「レオっ、何とかしろっ!」
「…何とかはしようとしている!しかし、びくともせんのだ、仕方あるまいっ!」
「自分の友達が喰われるのを仕方ないですますな!」
「すます気はないんだがな…」
「うわ~、いまぬるっていった!ぬるっていった~~~~~!!!」
「落ち着け、パピヨン!…やっぱり、こういうのが得意な人間は連れてくるべきだったか…」
「ぬるって、ぬるって…くそ~、オザック~、悪かった~どうにかしてくれ~」
「反省するんじゃな?」
「反省する、反省するから!…あ?」

 気まずそうな顔をするレオの肩から顔をのぞかせているのは。

「いつから見てた?」
「ブナ林のあたりから。後から親父さんにきいて、ついてきたんじゃよ」

 そう、オザック本人だった。

「分け前、とかなんとかいうよりも、じゃ」
「な、なにかな、オザック?」

 かっちゃん、かっちゃん。

 みるまにパピヨンの頭上まで積まれていく、レンガ。

「…マリスさんに『お疲れ様、オザックさん』とか『助かったわ、オザックさん』とか言われるチャンスを…」
「わ、わかった!今回のもオザックが行ってきていいから!」
「…オザック、本気で怒ってるわけじゃないんだろう?からかうのはそれくらいにしてやってくれ」
「そうじゃな」

 にこっとさわやかに笑ったあとでつむぎだされたものは。

 おなじみ、バトルソング、だった。



 動かなくなったレンガの山から、パピヨンがはい出てくる。
「っつちゃ~、ひどい目にあったぜ」
「…あ、本当だ。レンガレンガはバトルソングで麻痺を起こすって書いてあるな」
「じゃろう?」
 小冊子を目で追うレオにオザックがうなずいてみせた。
 ぱたぱたとホコリを払うパピヨンを見ながら、オザックがそっとレオに耳打ちをした。
「レオがいつもパピヨンをからかっておもしろがるのがわかったような気がする」

「あん?二人でなに、内緒話してんだよ?」
「いや、パピヨンは人気者だなぁという、話だ」

 ちがうな。
 やけにきっぱりとパピヨンが言った。

「さっきのオザック、レオと同じ顔、してたぜ?」



レンガといえば、レンガレンガ。おざさんのコラムは秀逸だと思います。
オザックもなかなかどうしていじわるさんの才能があるんじゃないか、と思う今日この頃。



作:天崎李玖

小話:香 【職業、仕事人】 …天崎李玖

「おや、もう帰るのかい?」

気怠い仕草で女がその身を起こす。
「そろそろ戻らないと木戸が閉まってしまいますから」
泊まっていけばいいのに、と寄り掛かる手をやんわりとほどく。

「冷たいこと。いい人の所へお帰り?」

いい人がいたらここにいないでしょう?
ゆったりと笑い、枕元に置いてあった刀をきり、と帯に差す。
女は男が武士であった事を今更ながらに意識した。もっとも、男の持つ、どこか崩れたような華やかさは、武士を演じる役者のそれに近く、気安さを違えるものにはならなかったのだが。

「隣りに綺麗な後家が越して来たんだろう?」
「よくご存知ですね。近所とはいえ、怖いもんだ」
提灯を受け取り、からからと笑う。
「女は女の話には敏感なものさ。特に後家同士ときちゃあさ」
「確かにね」
綺麗な人でしたが…
空いた手が女の頬に触れ、指が淡い紅を引いた唇をなぞった。
「赤い紅は嫌いでして。なんだか血を吐いたみたいでしょう?」

かり。
触れた指を噛み、女が笑う。
「おや赤が嫌いとは思わなかったよ。あんた、なんだかとても赤が似合うから好きなんだと思ってた」
「? 赤なんて身に着けちゃいませんが…」
「そうなんだけどさ」

「あんたはいつも赤をまとってる、そんな感じがするんだよ」

男はしばし考え。
「血の匂いがするからでしょうかね」
「え?」
「いえ、近所さまとは上手くやっていきたいものでね。わざわざお隣りの床に潜り込んで面倒の種をまいてくる気はありませんよ」
やわりと笑い外に出ると乾いた風が頬をなでた。
月をともに歩き始めた男が楽しげにつぶやく。げに恐ろしきは女の勘なり、と。

「旦那じゃないけど私も匂い袋買おうかな」
これほどしみこんだら消えるものではないけれど。


-了-
aka.jpg

-----------
2007年8月17日発行のコピー誌「職業、仕事人 番外編」収録作品


作:天崎李玖

該当の記事は見つかりませんでした。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。